昨年、成年年齢が18歳に引き下がり、自分の責任であらゆる手続きを行えるようになった若者が急増した。一方、十分な知識がないためにトラブルに巻き込まれてしまう人も増えたという。正しいお金の考え方を身につけることは、自分で自分の身を守る“武器”になる。今すぐ我が子に伝えたくなる、お金との向き合い方を紹介しよう。本稿は、午堂登紀雄『人生の正解をつくるお金のセンス ~17歳までに知っておきたい「使う」「貯める」「稼ぐ」「守る」「増やす」の考え方~』(技術評論社)の一部を抜粋・編集したものです。
パパ 慶太のパパにして、会社経営者。家計はすべてパパが握っている。将来は慶太に起業してほしいと考え、お金の面で困らないよう、いろいろ伝授に余念がない。
ママ 自営業。おっちょこちょいで天然だけど、家庭の雰囲気を盛り上げている。家事が苦手で部屋も散らかすので、慶太にも叱られている。
「清貧が正しい」
「金持ちは傲慢」ってホント?
慶太「『清貧』って言葉、ときどき聞くよね」
パパ「現実にはありえないと思うけどね」
慶太「どうして?」
パパ「『貧すれば鈍する』という言葉があるように、お金に困るといろんなことに余裕をなくしてしまうんだ。あれは払えるだろうか、お金は足りるだろうか、と不安に支配されて、思考力が落ちてしまうからね。たとえば、犯罪者の多くは無職だ。お金持ちが万引きをしたり、カッターナイフで店員を脅したりなんて事件は聞かないだろう?」
慶太「そう言われればそうか……。たしかに、市民プールに行くと結構ガラが悪い人多いけど、ホテルのプールだとそんな人はいないしね」
パパ「飲食店なんかもそうだよね。でも、そういうことを言うと、差別だと批判される。本当は差別じゃなくて、属性による行動パターンの分類に過ぎないんだけど、こと『収入』とか『貯蓄額』を基準に線引きすると、批判の対象になりやすいんだ」
慶太「なんでだろう?やっぱみんなお金に執着してるってこと?お金で比べられるのがイヤってこと?」
パパ「後者だろうね。特に男性ほど『収入額・貯蓄額=人間としての価値』と感じやすいからね。本来、人間の価値はそれだけでは決まらないんだけど、収入とか経済力を重視する人は多いんだ。でも、現実は自分はお金持ちじゃない。なのに収入=人間の価値だとすれば、自分を否定することになる。だれだって自分が能なしだとは思いたくない。だから、清貧が正しいはずだ、そうあってほしい、と現実から目を背けたいんだよ。もしかしたら昔の権力者が、貧しい庶民の不満を溜めさせないようにと触れ回ったのかもしれないけど」
慶太「そういえば漫画とかでも、金持ちは嫌味で横柄なキャラで描かれて、最後は没落する、みたいなパターンをよく見かけるよね」
パパ「それも大人の欺瞞だ。そもそも、どうやってお金持ちになったかというと、詐欺や搾取じゃない。そんなことをしたら、いまどきすぐネットで拡散して長続きしない。それでは単なるバカだろう?先祖代々からの資産家は別として、一代でお金持ちになった人は、多くの人の問題を解決し、あるいは顧客の願望や欲求を叶え、たくさんの『ありがとう』を集められた人なんだ」
慶太「タレントや漫画家もそうだよね。売れる人は、芸が一流で多くの人を楽しませてくれるから、収入が増える。多くの人が面白いと感じる漫画を描く人は、売れて儲かる」