そして、1980年代まで目覚ましい成長を続けてきた日本企業には、組織をコミュニティとして育てる素地がすでにあると述べていた。

 ミンツバーグによると、日本でいわゆる「失われた10年」(あるいは20年)が起きた理由の1つは、米国流のマネジメント手法を輸入したことにあるとしている。短期的な利益追求、株主偏重の経営方針、トップダウンの戦略徹底、成果主義、エクゼクティブと一般社員の給与の拡大など、米国流のやり方は、現在米国自身の社会を大きく蝕んでいる。

 米国では、企業は短期的利益の下落だけで多くの労働者を解雇し、社会不安をつくり出す。一方でエグゼクティブは、一生かかっても使い切れないくらいの報酬を得て、その富を増やすことばかり考えている。

米国内の富の4割を人口の1%が所有
移民が希望を失い人口流動性も低下

 彼らによると、一般労働者の人生など知ったことではない。米国のゴールドマン・サックスの社員が顧客のことを「マペット」(操り人形)という隠語で呼んでいたという事実がそれを物語っている。実際、現在の米国では、国内の富の40%が人口全体のわずか1%の人々のよって所有されている。

 結果、一般の人々の労働環境は悪化し、失業率は増加、離婚も増え、教育現場は荒廃し、犯罪率が上昇する。米国の中学生の数学と科学の能力は、ベトナムよりも下位だ。

 中でも、ミンツバーグが最もショックを受けたのは、米国の人口流動性である。かつて米国は、移民が夢と希望を抱いてやって来て、彼らの子どもたちがより良い暮らしができる地であった。したがって、米国への人口流入は多く、さらに米国内でもより良いチャンスを求めて、人々が多く移動するものであった。

 しかし、それらの流動性が大きく落ちているのだという。このことは、米国がもはや移民にとって「新たな希望の地」ではなく、国内の米国人自身も新たなチャンスを探す行動を諦めてしまっていることを示している。