積み重ねられた本写真はイメージです Photo:PIXTA

「本を読むより、体験をしたほうがいい」などとうそぶく人がいるが、読書には体験では代替できない利点がある。ベストセラー『嫌われる勇気』の著者が、考える力が深まる本の読み方と、読書の効用を解説する。※本稿は、哲学者の岸見一郎『自省のすすめ ひとりで考えるレッスン』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

本は優秀な対話相手であり
自分の考えを深化させるもの

 本を読むことについて批判的な人がいる。本など読まないで体験から学べとか、書を捨てて町へ出よという。肘掛け椅子の哲学者(armchair philosopher)という言葉があるが、「肘掛け椅子の哲学者」は書斎から外へ出ていこうとはしない。

 デカルトが『方法序説』の中で、「先生たちの監督を離れてもいい年齢に達するやいなや、私は書物による学問を全くやめてしまった」といっている。

 これは、読書をすべてやめてしまったというのではなく、読書だけが真理発見のもっとも有効な方法だと考えるのをやめたと解すべきであろう。デカルトが読書をやめたとは考えられない。

 デカルトのこの言葉を文字通り取る必要はないが、こんな言葉を目にすると本を読まない人は、本を読まなくていいのだと思ってしまう。

 もちろん、どう読書するかは人様々だが、本記事では「考える」という視点から読書を掘り下げていきたい。

 考えることは自分が自分とする対話であるため、独りよがりになったり、とんでもない方向に考えが進んでしまったりすることがある。そうならないためには、本を読むことは有用である。