新日本酒紀行「明石鯛」ガラス張りのビジターセンター Photo by Yohko Yamamoto

明石海峡から世界へ! 醸造と蒸溜の二刀流で35カ国へ輸出

 明石海峡大橋近くで、酒蔵と蒸溜所を併設する明石酒類醸造。社是は「全ての人に酒と笑いと幸せを」と蔵元の米澤仁雄さん。農家、造り手、流通と売り手、消費者の皆が酒を通して笑顔になる幸せな商いを目指す。1856年創業の老舗だが、太平洋戦争で蔵は全焼、1995年の阪神・淡路大震災でも甚大な被害を負った。1万石以上あった生産能力を大幅に縮小し、吟醸酒にシフトするが苦戦。知名度がなくても勝負できると思い海外へ。2005年に国際展示会に初出展し、年間の3分の1を海外で営業するが、売り上げにつながらない。地縁を得て、英国ロンドンのローカル市場に特化して営業に励んだ。

 一方で、09年に蔵を移転。空調を完備させ、温度管理可能な細長い小型タンクを特注し、四季醸造へ転身。ウイスキーにも挑戦し、17年に海峡蒸溜所が完成すると、地域素材を活用したジンも手掛けて高評価を得た。日本酒は地元播磨産の山田錦で醸した酒が、地理的表示制度「GIはりま」の指定を受ける。