選手投票のベストイレブンに
吉田の名前はなく…

 しかし、日本は1-1からもつれ込んだPK戦の末にクロアチアに屈した。偉大なる先輩たちを抜き去った証しとして吉田がひそかに設定していた未知の世界、ワールドカップのベスト8へと通じる扉をまたもこじ開けられなかった。吉田は前回ロシア大会でもベスト16で涙をのんでいる。

 原則23歳以下の若手選手たちで代表チームが構成される五輪に目を向ければ、出場資格のあった08年の北京大会に続いて、12年のロンドン、21年の東京両大会ではオーバーエイジで出場。ディフェンスリーダーとして、ロンドンと東京では4位入賞に貢献している。

 輝かしいキャリアを踏まえれば、日本サッカー界で史上最高のセンターバックと呼んでもいいのではないか。こんな問いを向けられた吉田は、苦笑しながら後輩たちの名前を挙げたことがある。

「まあ、(そう呼ばれても)一瞬だと思いますよ。冨安と板倉がすぐにやってくるので」

 吉田の言葉に偽りはなかった。年が明けて間もなくのこと。日本プロサッカー選手会(JPFA)が新設した「JPFAアワード2022」表彰で、ちょっとしたサプライズがあった。

 JPFAに所属する国内外の1654人ものプロサッカー選手による互選で、プレーしている国やカテゴリーに関係なくベストイレブンとMVPが初めて選出される。発表された11人すべてがヨーロッパ組、そのうち10人をカタール大会代表が占めた前者のなかに吉田の名前はなかった。

 センターバックとして選出されたのは、板倉滉(ボルシアMG)と冨安健洋(アーセナル)だった。JPFAの第7代会長としてアワードの新設に奔走した吉田は、ドイツ・シャルケの自宅から応じたオンライン取材で「実は僕も、僕自身には投票していません」と意外な事実を明かした。

「ベストイレブンに関してはいままでの実績ではなくて、昨年を通したパフォーマンスに対する客観的な評価なので。僕のポジションでは板倉選手と冨安選手が選ばれましたが、昨年の板倉選手は前半をシャルケの主力として2部から1部に昇格させる原動力になり、後半はボルシアMGで僕よりも確実にいいパフォーマンスを演じて、いい結果を出している。

 僕は同じブンデスリーガ1部でプレーしているので、そこは間違いない。冨安選手に関しては所属するカテゴリーが一つ上ですし、そこでしっかりパフォーマンスを出している。ともに賞に値する、価値ある活躍をしていると思っています」