本田圭佑2015年、成田空港 Photo:Jun Sato/gettyimages

FIFAワールドカップの解説で注目された本田圭佑。彼が脚光を浴びる前、はじめて海外移籍をするときから、私はスタイリングを手掛けてきました。話題となった両腕の腕時計も彼の個性を引き立たせるためにチームで取り組んだ戦略です。ファッションによってその人の印象は大きく左右されます。適切にコーディネートすれば強い印象を与えることもできます。本田くんのファッションから、洋服がいかに自分の魅力を伝える重要なツールであるかがわかるでしょう。連載『伝説のスタイリスト・近藤昌の「人生を変える装い」』の第2回目では、本田圭佑のファッションの裏側をお話しします。(スタイリスト&ファッションディレクター 近藤 昌)

本田圭佑に学ぶファッションで自分を演出する方法

 今はだいぶ変わってきましたが、昔はアスリートにおしゃれというイメージはありませんでした。学生時代から部活に打ち込み、周りはみんなジャージー姿、親子でトレーニングしている場合は親もジャージー姿。プロ契約を果たした暁には、自宅とスタジアム、練習場を往復する生活が始まります。ここでも必要なのはトレーニングウエアで、マスコミに露出するときはユニホーム姿です。洋服を知っている子が育つ環境ではありません。

 もちろん、オフシーズンにパーティーや式典でスーツを着る機会はあります。一般人のサイズは当然入らないので体格がいい人の服装をまねることになります。昔の野球選手はブカブカのダブルのスーツに、ゴールドのアクセサリーをジャラジャラつけている。ヤンチャなイメージしかありませんでした。

 これは子どもたちが憧れる大人像としてふさわしいイメージだろうか? かっこいいプレーをして、スタジアムを去る服装もビシッと決まっていて、スポーツ以外のメディアでも取り上げられていて、広く世の中を知っているアスリートの姿を根付かせることができないか――。新しいアスリート像をつくるべく、私はスタイリングを務めることになりました。

 本田くんとは運命的な出会いで、オランダへの海外移籍が決まったくらいのころです。初仕事となる撮影の前日に、マネジャーさんと一緒に食事をしている本田くんを見かけて、「明日はよろしくお願いします」と、声を掛けさせていただきました。

 ここから、彼のイメージ戦略が始まりました。彼のファッションは常に同じではなく、洗練されています。そして、その裏には、隠された意図もあるのです。