なぜ今、これまでの営業スタイルが通用しないのか?<br />新時代の営業「ストーリー営業」が必要なワケ

今、営業の世界で格差が大きく広がっている。「売れる営業担当」と「売れない営業担当」、「売れる営業組織」と「売れない営業組織」。なぜ、そんな「営業格差」が生まれるのか。その最大の理由は「営業担当に求められる役割」が決定的に変わってきているからだ。かつての「商品の説明をする営業」はまったく通用しなくなり、その後に広がった「課題をヒアリングし、解決策を提案する営業」の限界も見えつつある。
では、今の営業担当に求められている新しい営業の形とは何なのか。営業の根幹を解き明かし、新しい時代に通用する営業スタイルを教える一冊として『NEW SALES ~新時代の営業に必要な7つの原則~』が発売当初から、急速に売れ続けている。今回は、現代の営業パーソン必読の一冊を執筆した著者でもある麻野耕司さんに「営業をとりまく背景と、売れる営業担当は実際何をやっているのか」を詳しく聞いた。(取材・構成/イイダテツヤ)

売れる営業と売れない営業を分ける「営業格差」

――『NEW SALES』のなかで麻野さんは「営業という職業に大きな格差が生まれている」と書かれています。今、営業現場ではどんなことが起こっているのでしょうか。

麻野耕司(以下、麻野):営業担当個人においても、営業組織全体においても、生産性の部分で大きな格差が生まれていることは間違いありません。成果と、それに紐づく収入に大きな格差が生まれているんです。2021年、マッキンゼーが「日本の営業生産性はなぜ低いのか」というレポートを出しています。そこでの算出方法は「営業人員の人件費」を分母にとって、分子が「粗利」。それを彼らは「営業ROI」と定義しています。

――営業担当個人においても、営業組織においても格差が生まれているのには、どんな背景があるんでしょうか。

麻野:一言で言えば、営業が高度化しているんです。営業の世界が高度化、複雑化しているので、それに対応できていない個人、組織と、対応できている個人、組織の二極化が進んでいます。

『NEW SALES』でも紹介していますが、ひと昔前の営業は「プロダクト営業」だったんです。いわゆる「商品の機能や性能を説明する営業」ですね。

でも、それが段々通用しなくなってきて、次に生まれたのが「ソリューション営業」です。顧客の課題を解決する、文字通り「ソリューション」の営業。「御社の課題は何ですか?」というヒアリングから始まって、自社の商品やサービスでその課題を解決していくことを提案する。そんな感じですね。

――いわゆる一般的な「営業の本」を読んでいると、「プロダクト営業」では不十分で「ソリューション営業」が必要だというところまでは理解できるんですが、今はそれでも不十分だということですか。

麻野:そうですね。不十分だと思います。その次のフェーズを『NEW SALES』では「ストーリー営業」と呼んでいるんですが、そもそも「プロダクト営業」の時代では平均的な成果の人とハイパフォーマーでは1.5倍くらいの成果の差があったと言われています。

それが「ソリューション営業」の時代になると、3倍弱くらいにその差が広がっていきます。その段階でも営業の高度化、複雑化が進み、格差が広がり始めているのですが、これが「ストーリー営業」の時代になると、その差は簡単に5倍、10倍と広がっていきます。多くの営業組織に話を聞いても「2割の営業担当が8割の売上を出している」なんてところはザラにありますから。それだけ決定的な格差が生まれてきているんです。