経常黒字でも日本円が脆弱な理由、円に転換されるのは黒字の半分程度Photo:PIXTA

貿易収支の赤字は定着した。海外からの配当金や利子の収支である第1次所得収支の黒字で経常収支の黒字を確保はしている。しかし、その黒字のうち外貨から円に転換されるのは半分程度だ。貿易赤字による海外への資金流出額はカバーされず、需給面では円安に作用する構造となっている。(みずほ証券チーフ・マーケットエコノミスト 唐鎌大輔)

「構造的な円安」は紛れもない事実
日本は外貨が入ってこない国に

 4月に財務省より発表された2月の国際収支統計で、経常収支は2兆1972億円と2カ月ぶりの黒字に復帰した。年初に貿易赤字が膨らみやすい季節性を考えると、今後は経常収支の符号自体はプラス、すなわち黒字が続くと思われる。

 内訳を見ると、貿易サービス収支が8245億円の赤字を記録する一方、第1次所得収支は3兆4407億円の黒字を記録している。しかし、もはや経常収支の符号(黒字or赤字)は円相場の需給を考える上であまり参考にならない。

 過去10余年の月日を経て日本の対外経済部門は明確な変化に直面している。端的に言えば、「これまでよりも外貨が入ってこない国」になっている。ということは、「これまでよりも通貨が弱くなりやすい」、言い換えれば「これまでよりも円高になりにくい」という事実を直視するのは当然の話であろう。

 日本の国際収支を議論する際、(1)貿易赤字が大きいこと、(2)第1次所得収支黒字が円買い需給に寄与しないことはもとより、最近の本欄で繰り返し論じているように、(3)「その他サービス収支」の赤字も大きいことも注目の論点となる。

 このうち、(2)に関しては、単純に「外貨のまま再投資されるものが多い」と解説してきたが、次ページ以降この点に関して具体的な数字を交えて議論を示したい。