シニア世代にトラブルが多い3つの理由

 ところで、なぜシニア世代の投資をめぐってこれほどトラブルが多いのでしょうか? いろいろなケースを見聞きし、ご相談をいただいてきた私の経験から、そこには大きく3つの理由があるように思います。

 第一に、金融機関から提案される金融商品や金融サービスが年々複雑な仕組みになってきていること。単純に「株式」や「債券」「保険」といったくくりでは捉えられなくなっていて、どんな仕組みで利益が出るのか、あるいは損失を被るのか、理解するのが非常に難しくなっています。個別にどのような設計、仕組み、条件になっているのかをきちんと調べ、リスクとリターンの関係を分析してみないと、本当に自分の希望やニーズに合ったものかどうかが判断できません。

 第二に、顧客側の知識不足、準備不足がなかなか解消されないことです。最近でこそ、国をあげて貯蓄から投資へと促したり、NISAやiDeCoを広く推奨したりして「資産形成」という言葉が一般に浸透してきました。少しずつ学校でも金融教育が導入されてきています。

 しかし一般にシニアと呼ばれる世代では、十分に金融リテラシー(金融や経済に関する知識や判断力)を身につけられる機会が少なく、お金の使い方が貯蓄に偏っていたことは否めません。そのため投資や運用には「難しい」「怖い」「素人がやるものではない」といったイメージを持つ人も少なくないでしょう。

 金融商品には株式、債券、保険だけでなくさまざまな種類があり、それらをすべて自分で調べて理解するのは至難の業です。今ではインターネットで検索すれば多くの情報が手に入りますが、70代、80代ともなると、ネット検索自体が馴染まない人も多いでしょう。そのためつい金融機関の窓口を頼り、「長年取引のある金融機関の担当者がすすめるのだから大丈夫だろう」と丸投げしたくなります。ところが、そこに落とし穴が待ち構えているのです。

 第三に、銀行や証券会社などの金融機関の担当者も、運用のプロではなく、販売のプロであることが挙げられます。担当者は商品についてよくわからないか、あるいは薄々「この商品・サービスは必ずしもこのお客様のためになっていない」「いまのタイミングは投資をするべきではない」「もっと時間をかけて少しずつ投資していくべき」と気づきながらすすめていることがあります。