ひとり終活大全#8Photo:imtmphoto/gettyimages

かつての日本では、自立できなくなった高齢者の面倒を家族が見ることは当たり前だった。しかし今、頼れる家族がいない高齢者が急増している。「ひとり死」が当たり前の社会にどう備えるべきなのか。特集『ひとり終活大全』(全24回)の#8は、シニア生活文化研究所代表理事の小谷みどり氏に解説してもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部)

「週刊ダイヤモンド」2022年7月16日・23日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

もはや「老いては子に従え」の時代ではない
「ひとり死」が当たり前の社会に

 これまでの日本では、自立できなくなったときには家族が支援したり、面倒を見たりするのが当たり前だとされてきた。ところが、支援してくれる家族がいない、あるいは、家族はいるが頼れないというケースが増加している。

 1980年以降、男女共に50歳時未婚率(生涯未婚率)が上昇し、中でも男性は90年に5%、2000年に10%を超え、20年には25.7%となった。しかも50歳の非正規雇用(派遣社員、パート、アルバイト)男性の60.4%が未婚だという。

 国立社会保障・人口問題研究所の「生活と支え合いに関する調査」によれば、65歳以上の単身高齢者において、電話を含む会話頻度が2週間に1回以下である人が16.7%もいた。つまり、未婚のシニア男性は、配偶者や子供がいないだけではなく、経済的基盤や他者とのつながりが脆弱である可能性が高い。

 80代の親が、自宅に引きこもる50代の子供の生活を支える、いわゆる「8050問題」では、親が要介護状態になったり、亡くなってしまったりすれば、たちまち子供の生活は立ち行かなくなってしまう危険性をはらんでいる。

 19年の内閣府の発表では、40~64歳の引きこもりシニアは約61万3000人に上るというが、彼らの多くには、親亡き後の生活を支援する家族がいない。

 また、20年に亡くなった人のうち、死亡時に90歳以上だった人は28.7%に上る。もはや「老いては子に従え」の時代ではなく、親が自立できなくなったときには、子供も老いており、親を支えられるとは限らない。それに加え、高齢者の核家族化が進み、子供がいても、老後は夫婦ふたりで、というライフスタイルが定着すると、「ひとり死」が当たり前の社会となる。

 次ページでは、「男女共に『先に死んだもん勝ち』と考える人が増えている」と指摘する小谷氏に、身寄りなし問題に直面する前に備えておく準備について解説してもらった。