起業精神に関する統計も見てみよう。世界銀行のデータによれば、日本の年間起業率はOECD諸国の中で最下位だ。2013年においては、アメリカの3分の1に留まった。また「OECD科学技術・産業スコアボード2008」によれば、ベンチャー投資額についても日本が最下位だ。アメリカの投資額は、対GDP比で見ると日本の20倍以上にも及ぶ。

 同様のデータはまだある。国際的起業家調査(GEM=グローバル・アントレプレナーシップ・モニター)では、日本の16~64歳の人口のうち、起業活動を積極的に行っているのはたった1.9%という結果が出ている。カウフマン財団(起業家育英などにかかわるアメリカの非営利団体)の調査によれば、現在アメリカでは8人に1人(11.9%)が起業活動に従事しているという。これは先進国の中ではほぼトップだ。

 起業意識の違いが、経済全体に実質的な影響を及ぼすことは言うまでもない。ウォートン・スクールの学生が書いた論説では次のように書かれていた。「日本では『機会志向(Opportunity-driven)』の起業精神が相対的に不足しており、それが過去20年間の経済停滞の一因となっている」一方、アメリカでは、起業家精神が経済繁栄をもたらした要因のひとつと考えられているようだ。「実証研究によって、機会志向の起業精神こそが、現在の市場経済における成長の源だということが明らかになっている」

 しかし起業精神の違いは、本当に失敗の受け止め方の違いによるものなのだろうか?その答えを出そうと、GEMは2009年、イノベーション志向の先進諸国20カ国で、起業に関する大々的な意識調査を行った。結果は明白だった。起業失敗に対する恐怖心が最も高かったのは、日本人だったのである。アメリカ人は最低クラスだった。

 この傾向は5年後も変わらなかった。2014年に、開発状況の異なる70カ国を対象に行った調査でも、起業失敗に対する恐怖心が最も高かったのは、日本人という結果が出た(実質的に一番高かったのはギリシャだが、当時は財政破綻危機の真っ只中にあった)。アメリカはやはり最低クラスにとどまっていた。また2013年の調査でも、「起業に関連するスキルは自分で伸ばすことができる」と考える傾向が世界で最も低かったのは日本人だった。