新型コロナウイルス感染症の位置付けが、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられた。それにより、民間の保険会社のコロナ対応も変更された。医療保険に加入している場合、新型コロナ感染での入院給付金は、医療機関以外の自宅療養や宿泊療養でも「みなし入院」として支払われてきた(時期によって対象者は異なる)が、その対応も5月7日で終了した。「みなし入院」を巡っては保険会社も頭を痛めてきた。医療保険は保険会社にとって“おいしいビジネス”のはずが、新型コロナまん延で計算が狂ったからだ。では、今後、医療保険に入るメリットはあるのか。(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)
医療保険の経済的合理性は低い?コロナ禍で変化
医療保険ほど「要る・要らない」が議論される保険はない。
理由の一つは、加入者が保険料を払う期間が長いこと。終身払い契約を選んでいる人が多いので、毎月の支払いは数千円だとしても長期で積み上げていくと途方もない金額になる。そもそも健康な状態でないとすんなり加入できないので、加入を検討する時点ではこの先病気やケガで入院するかはピンと来ない。払い損になるのではないかと悩むのだ。
さらには「日本は公的な健康保険制度が充実しており、たとえ高額な医療費がかかっても高額療養費制度により自己負担は少なくて済む。そのため、保険に入らずとも一定の貯蓄があればまかなえる」という記事も多い。
加えて入院の短期化もある。医療保険とは入院および手術に対して給付金が出るのが基本的な設計だ。2020年度の患者調査(厚生労働省)によると、一般病院の在院期間は14日以内が66.8%、15~31日までが16.2%となっている。精神疾患や感染症などを除いた一般病床は7割が14日以内だ。
しかし、病状にもよるが2週間も入院させてくれる病院はなかなかない。1週間いられたとして、給付金は日額5000円なら3万5000円、日額1万円なら7万円だ。加えて手術給付金が5万円、10万円、20万円ほど出たとしても、ありがたがるほどの金額ではないことは一目瞭然だろう。
もし毎月3000円程度保険料を払っていたとすれば、1年で3万6000円になる。日額5000円で1週間入院した時に受け取れる給付金と、ほぼ同額だ。手術費用も、多くの人は高額療養費によって上限9万円程度の自己負担で済む。医療費に備えるだけなら、医療保険に加入する経済合理性は低い。
しかし、コロナ禍を経て、今また、医療保険に対する評価に変化が起きている。筆者の実体験も踏まえて、「医療保険」の実態を見ていこう。