23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚、現実は「未曾有の実質賃金下落」Photo:PIXTA

今春闘賃上げ率、3.7%
「93年以来の伸び」喜んでいいのか

 連合の春闘の第4回回答集計結果によると、2023年の春闘賃上げ率は3.69%となった。これまでの伸び率に比べると、格段と高い(図表1)。

「1993年以来の高い伸び率」などと、報道では好調が強調され「このように高率の賃上げが実現したのは、人手不足が深刻化しているからだ」といった解説も見受けられる。今年の春闘で「未曾有の賃上げ」が行なわれたかのような錯覚に陥る。

 しかし、実際に起きているのは、正反対のことだ。

 春闘賃上げ率が高くなったのは、輸入物価高騰などによる原材料コスト上昇の価格転嫁が行われ企業の粗利益(付加価値)が増えたからだ。

 しかし物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化している。