賃上げ率「29年ぶり3%台」見通しも、好調23年春闘の隠れた危うさ2023年春闘で記者会見する連合の芳野友子会長 Photo:JIJI

自動車・電機などで「満額回答」
1年限りの盛り上がり?

 2023年春闘で3月15日の自動車、電機大手などの集中回答では、「満額回答」で応じる企業など軒並み高めの妥結が相次ぎ、長年続いてきた賃金低迷を脱する可能性を期待させる結果となった。

 23日時点の連合の集計では3.76%と予想を上回る高さとなっている。

 今後は中小企業の賃上げに焦点が移るが、23年の春季賃上げ率(主要企業)はいわゆる官製春闘の最高値(2.38%、2015年)を大きく上回り、実に29年ぶりの3%台に乗せる公算が大きくなっている。

 もっとも、経営サイドが前向きになっている背景を探ると、足元の急激な物価の高まりが大きく、政府が目指す「構造的賃上げ」ではなく、1年限りの盛り上がりに終わる可能性もある。

 人手不足や、米中対立やウクライナ戦争などによる経済安全保障の重視や脱炭素化など、世界経済の構造変化がコストを持続的に押し上げる圧力が今後も続くが、賃金上昇、消費増加の拡大均衡につなげていくには来年春闘がより重要なものになってくる。