米国に密入国した密航者の中に現れた中国人
深夜、メキシコと米国との国境地帯。地続きの国境線の向こう側に立っている米国の警察官が、懐中電灯で国境線に沿って作られた鉄条網のメキシコ側の河畔を照らしている。なぜか。
群衆がその河畔を移動しているのだ。中には乳飲み子を抱えている男性もいる。米国に密入国しようとする者を取り締まる米国の警察官が、照明の便宜を与えているこの滑稽な光景に、今日の米国密入国における現状の一つの側面を見いだすことができる。
メキシコと米国との国境を突破して米国に密入国した人たちの群れに、最近、新しい顔が増えた。中国人だ。
中南米ルートを使って米国とメキシコの国境にたどり着いた中国国民の数は最近急増しており、米国国土安全保障省の統計によると、昨年10月以降、中国人密入国者が6500人を超え、前年同期の15倍に跳ね上がり、歴史的なピークに達したという。
私は、1990年代初頭、中国人密航者の非合法旅行を操る業者「蛇頭」と密航者たちを追跡して取材したことがあるだけに、このニュースを知り、大きな驚きを覚えた。中国社会も大きく変化し、中国人の密航者はいなくなったと思っていたからだ。