三菱商事の2023年3月期連結決算は、初めて純利益が1兆円を超えた。実は海外には、日本の総合商社に相当する企業の形態は見当たらない。「ラーメンから航空機まで」と称されるように総合商社の事業領域は幅広く、資源や穀物を輸入に頼る日本ならではのビジネスモデルだ。一方で株価には割安感があり、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増してもいる。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
バフェットも見初めた日本の5大総合商社
三菱商事の2023年3月期の連結決算は、初めて純利益が1兆円台を上回り、2年連続で過去最高益を更新した。同社は2月に公表していた株主への価値還元も強化するという。
今年4月、著名な投資家ウォーレン・バフェット氏(バークシャー・ハサウェイCEO)は、三菱商事をはじめとした日本の5大総合商社への追加投資を表明した。バフェット氏は、5大総合商社の株価の割安さ、独自のビジネスモデルに支えられた中長期的な成長性を評価している。
三菱商事に関する今後の注目点の一つは、世界経済の環境変化にいかに対応するかだ。地政学リスクは、台湾問題の緊迫感や、ウクライナ紛争の今後の展開など見通しづらい要素が山積している。
また、脱炭素の動きも加速するだろう。洋上風力発電など、再生可能エネルギー由来の電力供給体制はいっそう強化されるはずだ。三菱商事はエネルギー分野での強みを発揮することで、収益獲得のさらなる機会につなげることができるかもしれない。大手商社の業務展開には、大いに期待を持って注視したい。