新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、コロナ禍によって大打撃を受けた業界・企業の業績の完全復活に対する期待が高まってきた。上場70社超、23業界における月次の業績データをつぶさに見ると、企業の再起力において明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移から、6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「コロナで明暗!【月次版】業界天気図」。今回は、2023年3月度の旅行編だ。
HISと阪急交通社どちらに軍配が上がる?
旅行の主要2社が発表した2023年3月度の月次業績データは、以下の結果となった。
◯HIS(エイチ・アイ・エス)の旅行総取扱高
3月度:前年同月比611.7%(511.7%増)
◯阪急交通社(阪急阪神ホールディングス〈HD〉)の総取扱高
3月度:同414.6%(314.6%増)
2社とも前年実績を大幅に上回り、前年同月比で3桁のプラスとなった。HISが前年同月の6倍以上、阪急交通社が同4倍以上と平時ではあり得ない増加率だ。
なお、この連載の旅行業界編では近畿日本ツーリスト(KNT-CTホールディングス)も取り上げてきたが、今回は割愛する。同社が新型コロナウイルス関連事業などを受託した自治体に対し過大請求していた問題により、23年3月度の月次業績の発表を延期しているためだ。
コロナ禍による行動自粛の影響で、旅行は壊滅的な打撃を受けた業界だ。が、この1年ほどは行動自粛の雰囲気もなくなっていく一方、国の旅行支援策による追い風や、訪日外国人(インバウンド)需要の復調など、旅行業界はどん底まで落ち込んだ需要を取り戻しつつある。
とはいえ、コロナ禍で業績が大幅に悪化し、そこからの反動増による「見せかけの好業績」の可能性もある。そのため、時系列で数字の推移を見ながら、コロナ前の水準と比較した「真の回復度」を詳しく確認していこう。また、「海外旅行」「国内旅行」「訪日旅行」と内訳を深掘りすると、意外な結果が判明した。さて、HISと阪急交通社、どちらの回復度に軍配が上がるだろうか? 当ててみてほしい。