東海道新幹線Photo:PIXTA

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、コロナ禍によって大打撃を受けた業界・企業の業績の完全復活に対する期待が高まってきた。上場70社超、23業界における月次の業績データをつぶさに見ると、企業の再起力において明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移から、6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「コロナで明暗!【月次版】業界天気図」。今回は、2023年4月度の鉄道(JR)編だ。

東海道新幹線の利用状況「真の回復度」は?

 鉄道(JR)の主要4社が発表した4月度の月次業績データは、以下の結果となった。

◯JR東日本の鉄道営業収入
 4月度:前年同月比129.7%(29.7%増)

◯JR東海の新幹線の利用状況
 4月度:同140.0%(40.0%増)

◯JR西日本の運輸取扱収入
 4月度:同121.6%(21.6%増)

◯JR九州の運輸取扱収入
 4月度:同129.0%(29.0%増)

 株式上場しているJR4社の23年4月度の業績は、前年実績を大きく上回った。中でもJR東海の新幹線の利用状況が、前年同月比140.0%(40.0%増)と目立つ。

 新型コロナウイルス禍の影響で、鉄道各社は大幅な業績悪化に見舞われた。が、この1年ほどは行動自粛の要請もなくなり、さらに国の旅行支援策や訪日外国人客(インバウンド)受け入れ緩和もあって、鉄道利用は着実に回復している。こうした環境の好転を受け、4社とも23年3月期の通期決算では増収増益を達成。JR東日本、JR東海、JR西日本は3年ぶりの最終黒字に転じ、JR九州も鉄道事業が3年ぶりに黒字転換を果たした。

 ただ、コロナ禍であまりにも落ち込みが大きかった業界であるだけに、前年比較よりもコロナ前の水準と比較する方が、回復度を正しく理解できる。そこで、23年4月と19年4月の数字を比較し、分析してみよう。すると、4社ともいまだ回復途上であることが分かった。特に、JR東海の新幹線の利用状況は、全く違う印象の数字が見えてきた。次ページでは、それら詳細をつまびらかにする。