駅マエで自転車は借りられる? オンデマンドバスは? 自動運転車両の計画は? 交通アプリは? ハードへの投資だけでなく、目的からのアプローチで技術や情報を取り込み、交通を街の活性化につなげられるか。「未来」につながる駅になるか否かはそこで分かれる。特集「駅・空港パワーランキング」(全11回)の最終回では、北は網走駅から南は鹿児島中央駅まで主要&注目の35駅における交通サービスの実態を調べた。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
JR2社の「エリアまたぎ」
ICカードで改札を通れない
ICカード乗車券の「Suica」や「PASMO」が浸透した昨今、JRであろうと私鉄であろうと、ICカードが1枚あれば改札機にタッチして乗り降りできるようになった。その感覚で東京から乗車して静岡県の熱海駅より先で降りると、ICカードで改札を通れずに戸惑う事態が発生する。
東海道本線では熱海駅までがJR東日本、その先の函南駅はJR東海のエリアであり、ICカード乗車券はエリアをまたいで使えないからだ。両エリア間を通る東海道本線であっても、降車した駅で精算が必要になる。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは静岡も競技会場になる。戸惑う人が駅にあふれるかもしれない。
エリアまたぎの不便を残す静岡で皮肉にも、熱海駅や三島駅から南下する伊豆半島で交通事業者の垣根を取り払った便利なサービスが試行されている。伊豆観光の活性化で手を組むのはエリアを分け合うJR2社ではない。JRと私鉄の組み合わせだ。
東急とJR東日本が手を組んだ伊豆観光
乗り降り自由! 観光施設も事前に入場券
東急とJR東日本などは鉄道、バス、オンデマンド乗合交通、レンタカー、レンタサイクルなど複数の交通をスマートフォンで予約、決済して目的地までシームレスに移動できるサービスの実証実験を始めた。今春に実験フェーズ1を実施、12月から20年3月上旬まではフェーズ2が続く。
実験で提供している経路検索や予約、決済など一元化したウェブサイト「Izuko」は、デジタルフリー乗車券や観光施設のデジタル入場券を事前にクレジットカードで購入できる。
デジタルフリー乗車券は数種類あり、例えば「Izukoイースト」は熱海駅から伊東駅、伊豆急下田駅などで、JR伊東線や伊豆急行線、東海バスなどが乗り降り自由になる。大人3700円、購入当日を含め2日間有効だ。
この実証実験は「観光型MaaS(マース)」と呼ばれる。これまで利用客は各交通機関について個別に情報を入手したり、予約や支払いをしてきた。
対してMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)は出発地から目的地までのドア・ツー・ドアの移動に対し、さまざまな交通サービスを最適経路で組み合わせて一つのサービスとして提供するものだ。
MaaSへの取り組みを含め、全国の駅はどのくらい目的地と「つながる」拠点となっているのだろうか。
ダイヤモンド編集部では全国の主要あるいは注目の35駅(*)について、「当該駅で利用できる交通サービスの状況(民間で提供されているものを含む)」「交通サービスに取り組む主な目的」について当該駅がある市町村にアンケートを行い、回答を基に駅ごとの状況について表を作成した(回答内容をまとめたもので、実際の状況と異なることがある)。
【観光地の7駅】網走駅、釧路駅、会津若松駅、日光駅、伊豆急下田駅、大津駅、高松駅
【LRT・路面電車導入の5駅】富山駅、高岡駅、広島駅、高知駅、鹿児島中央駅
【スマートシティ標榜エリアの7駅】札幌駅、つくば駅、大宮駅、新百合ヶ丘駅、新潟駅、祝園駅、倉敷駅
【主要16駅】青森駅、仙台駅、水戸駅、高崎駅、浦和駅、千葉駅、立川駅、八王子駅、町田駅、川崎駅、甲府駅、静岡駅、三宮駅、姫路駅、徳島駅、小倉駅