昨日は「OK」と言ったのに、今日になったら「NO」と言ってきた。
ほめられたから、同じことをやったところ、なぜか今度は怒られた。
言ってることがコロコロ変わって、ついていくのが大変!
いったい何が正しいのかわからない…。
こういう「一見、自分勝手な人」たちに振り回されて、身も心も疲れ切ってしまっている人はたくさんいます。
そこで、30代で経営者歴10年以上、『20代が仕事で大切にしたいこと』著者の飯塚勇太氏に、他人に振り回されている人に伝えたい「真実」について伺いました。
(編集/和田史子)
すべては「他者への想像力」だけれど…
仕事で大切にしたいことの1つに
・すべては「他者への想像力」
というものがあります(参考記事)。
他者への想像力、いわば「他者想」とは、「自分以外の誰か」のことを想像して考え、行動することです。
具体的には
「どうすれば喜んでもらえるだろう」
「どうすれば役に立つのだろう」
「どうすれば気持ちよく動いてくれるのだろう」
と考えて行動すること。
同時に、
「何をすると嫌がるのだろう」
「何をすると困るのだろう」
「どんなふうに言うと不快な気持ちになるのだろう」
といった「相手にとってのネガティブ」も考え、そういった行動をしないこと。
これらができる人は、
・仕事のできる人
とか
・気のきく人、気が回る人
などと評価されます。
しかし、他者想を発揮して人間関係がうまくいくようになったからといって、「自分のやり方は正解なのだ」と思い込んでしまうケースも…。
時には、自分が善意でおこなったことが「やらないでほしい」とか「そこまでやらなくていい」などと、真っ向から否定されることも…。正解だと思って動いたのに間違っていたときのダメージは大きく、この先どう動いていいのかがわからなくなってしまうことも…。
私も過去に失敗したことがあります。
他人に親切にすることはいいことですが、善意を人に押しつけすぎてはいけません。
本当に「気がきく」とは?
では、本当の意味で「気がきく」とは、どういうことなのでしょうか。
社長の藤田(晋)に名前を覚えてもらえた日のことを、私は今でもはっきりと覚えています。
まだ内定者だった頃のことです。取り寄せたお弁当を食べながら、藤田を含めた数人でおこなうミーティングの後半、みんながお弁当を食べ終わった直後に率先してごみを集めて回ったところ、藤田にほめられたのです。
当時の私には、打ち合わせの内容についていくだけの知識も経験も実績もなく、その場で貢献できそうなことは、お弁当のごみを捨てるくらいしかありませんでした。
ただそれだけの理由でごみを集めて回ったところ、藤田から「飯塚くんは気がきくね」と声をかけてもらったのです。
私は正直、「えっ、こんなことでいいの?」と思いました。
同時に、「こんなことで喜んでもらえるのだから、これからも続けよう。知識・経験・実績を積んでも、ずっと続けよう」とも思いました。実際に今でも、役員会でお弁当を食べた後、ごみを集めて回る習慣は続いています。
ただ、お弁当のごみを片づけるときに、私なりに気をつけていることが一つあります。
「何が何でも、自分がごみを片づけるのだ」という気合いを示さないことです。
人間、日によって気分はさまざまです。
たまには自分のごみを自分で片づけてみたい気分のときもあるでしょう。
ごみを捨てにいくついでに、誰かに話しかけたり、何かちょっとした用事をすませたかったりするときもあるでしょう。
また、ちょっと機嫌が悪く、私の「若手なのでごみを集めてますよ感」が鼻につくときもあるでしょう。
あるときに喜んでくれた行動を、相手が常に喜んでくれるとは限らないのです。
自分の善意を、相手に押しつけすぎないように気をつけるのも、大切なことです。
周りを観察して「他者想」を発動し、「今日はごみを集めるのをやめよう」と判断することもまた、相手への気づかいなのです。
行動の正しさは「時と場合」で変わる
上司から「君は電話をとるのが速いね。助かるよ」とほめられたとします。
代表電話が鳴ったら率先してとるのが基本的には正しい行動です。
しかし、いつ何時でも、何が何でも上司より先に電話に出るのが正しい行動かといえば、そうではありません。
例えば、見覚えのある携帯電話番号から会社に電話がかかってきて、あなたが出て、上司につないだとします。
ところが、上司と相手が話し始めてから程なくして、電話が途中で切れてしまいました。
どうやら相手方の電波状況がよろしくなかったようです。
数秒後、また同じ携帯電話番号から、電話がかかってきました。
ここであなたがまた、上司より先に電話に出てしまったら、どうでしょう。
上司はきっと、イラッとするでしょう。
その電話は、間違いなく上司あてのものだからです。
電話に限らず、「基本的には正しい。ただ、時と場合によっては正しくない」という行動は、世の中の至るところに存在します。
どう考えても正しい行動をとるのにも、常に他者への想像力を働かせ、空気を読む必要があるのです。
気まぐれな人にも「理由(わけ)」がある
「この前ほめられたのと同じことをしたのに、今度はしかられた。この上司は本当にきまぐれだ」……そう憤る前に、自分の行動がその場面で本当に適切だったかを振り返ってみましょう。
言い換えれば、あるときは「OK!」と言っていた人が、他のときには「ダメだね!」と言ったとしたら…。
その人の「気まぐれ」に振り回されて疲れてしまう前に、
「いつもと違う意見を言わせる理屈や気分など、なんらかの『理由(わけ)』があるのではないか」
と疑ってみるのです。
もちろん単なる気分屋さんの場合もあります。
であれば、その人の気分がいいときに「いいね!」をもらえばいい。
気分だけでなく体調が悪いときも同様です。
調子が悪いので話しかけてほしくないから「ダメ」と言っているだけかもしれません。
であれば、後日改めて調子の良さそうなときに相談すればいいのです。
その人の上司や先輩にあたる「上の人」がいるときには、判断が慎重になり「いいね!」を言わなくなる場合。
こういうときは、「上の人」がいない瞬間を見計らって「いいね!」をもらえば問題ありません。
ほかにも、
・具体的な数字があればOK(ないとダメ)
・ほかの人がOKと言っているのならOK
(誰もOKを言っていないのであればダメ)
・自分のことを頼りにしてくれたらOK
(ほかの人にすでに相談した話ならプライドが許さないからダメ)
こんなふうに、理不尽に思えるものも含めて、「その人なりのルール」が存在する場合がほとんどです。
であれば、そのルールをいち早く見つけ出して、うまく付き合っていけばいいのです。
あの人は気まぐれで大変、あの人は自分勝手で困ると思ったときは、感情ではなく思考をフル回転させて、謎解きゲームのように対処してみてください。ご自身のメンタルを守るためにもおすすめです。
(飯塚勇太著『20代が仕事で大切にしたいこと』から一部を抜粋・改変しています)
株式会社サイバーエージェント専務執行役員
1990年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
2011年、サイバーエージェントの内定者時代に、友人らと開発・運営した写真を1日1枚投稿し共有するスマートフォンアプリ「My365」を立ち上げ、21歳で株式会社シロク設立と同時に代表取締役社長に就任(現任)。2014年、当時最年少の24歳でサイバーエージェント執行役員に就任。2018年株式会社CAM代表取締役、2020年株式会社タップル代表取締役に就任(現任)。2020年サイバーエージェント専務執行役員に就任(現任)。
『20代が仕事で大切にしたいこと』が初の著書となる。