退職した後は、大きく分けると(1)定年後も働いて得る収入、(2)公的年金、(3)自分の持っている資産が生み出す資産所得(配当、売買益、不動産の家賃等)、そしてそういうものがある会社に勤めている人であれば(4)企業年金――といったところが収入の主なものだ。

 現役の会社員であれば、ほとんどの人にとって収入は「給与」だけだろうからシンプルだが、定年後は、その人の働き方や生き方によって、収入の種類も違ってくるし、年金も受け取り開始時期によってその金額が大きく違ってくることになる。

 一方、支出の方はライフスタイルが変わらなければそれほど大きな違いはない。だからこそ、できるだけ現役の早いうちから支出をきちんと把握する習慣をつけておくことは非常に重要なのだ。なぜなら支出の多寡によって定年後も働くかどうか、年金の繰り下げが可能かどうかという選択肢を考える必要が出てくるからだ。

 結局、どこまで行ってもベースになるのは収支であることを考えると、特に自分でコントロールできる支出の把握をきちんとすべきなのだ。

 また、生活の支出において「無駄をなくす」という観点から考えても支出管理に家計簿アプリを使うことは有効だ。もちろん無駄の最たるものは加入している意味の無い保険や不用意な借金だが、そういうものは対策がはっきりと見えている。

 ところがそれらとは異なり、日常生活の中での無駄というのは自分で意識しているつもりでもなかなか把握できないものだ。だからこそ、家計簿アプリを使って見えなかった使途不明金を明らかにするということは極めて重要なことなのだ。。

 漠然とした老後不安を抱いているだけではなく、具体的な行動として支出の把握を考えていくべきだろう。家計簿アプリは、その有効な手段になるのは間違いない。