おもちゃで遊ぶ子どもたち写真はイメージです Photo:PIXTA

私たちは幼少期からさまざまな場面で自分の気持ちと相手の意思、それぞれを尊重することを求められています。「性的同意」が問題視されることも多い昨今、自分の体と気持ちを尊重することの大切さを、どのように子どもに伝えるべきか。ハーバード大学医学部准教授の内田舞氏が「同意」の重要性について解説します。※本稿は、内田舞『リアプレイザル 不安や恐怖を和らげる方法』(実業之日本社)の一部を抜粋・編集したものです。

「YES」も「NO」もリスペクトする

 私は、メンタルヘルスを保つ上で最も大切なことは、「自分の尊厳を守ること」だと思っています。尊厳を守るとはどういうことなのでしょうか? 「自分の存在や思いや意見には意味がある」と感じることではないかと私は思うのです。

 ここで重要になってくるのが「同意」の考え方です。

 近年、同意と聞くと、セクシャルコンセント(性的同意)が思い浮かぶ方もいらっしゃるでしょう。ヨーロッパでは性教育が義務化されており、オランダでは4歳から、フランスでは6歳から、フィンランドでは7歳から、ドイツでは9歳から、公立学校での性教育が始まり、人間関係の中での「同意」というコンセプトに関しても低年齢から紹介されます。アメリカでは30の州で性教育が義務化されています。

 日本では、2023年度から「生命(いのち)の安全教育」がスタートしました。これは、子どもたちが、近年増えている性暴力の加害者や被害者、傍観者にならないようにする取り組みの一つ。教材は幼児期から用意され、文科省発行の手引書によると幼児期には「幼児の発達段階に応じて自分と相手の体を大切にできるようになっていく」と記載されています。

 また、小学校高学年の教材では「自分と他の人を守るためのルールや、自分と他の人との距離感が守られないときの対処法」などを学んでいくようです。

 さて、私の息子たちが通ったアメリカ・ボストンのプレスクールでは、2歳児のクラスから「同意」について教えられました。

 この年齢での同意は、医療的同意や性的同意よりもさらに基本的なことで、人間関係の中で自分の意思を表明すること、そして相手の意思を尊重することの重要性を学びます。

 例えば、紅茶を用いたアクティビティがあります。友達に「一緒にお茶を飲まない?」と誘うというものですが、そこで友達が「YES」といっても「NO」と言っても、「どちらもリスペクトすること」と教えられたのです。

 また、「遊ぼうよ」と誘われたときに、遊びたいときもあれば遊びたくないときもあるのが自然だということなどを教えられ、おもちゃで遊んでいるときに友達が「貸して」と言った場合も「貸してもいい」と思うときもあれば、「まだ使いたい」というときもあり、どちらでもいいと教えられていました。