缶タイプの登場で懸念される
「クラフトコーラのジレンマ」

 クラフトコーラを楽しむ場は、家庭だけではない。

 2021年頃にソバーキュリアス(アルコールを飲んでも問題ない人が、ポジティブな気持ちであえて飲まないスタイルのこと)という考え方が広まると、居酒屋で楽しめるノンアルコールドリンクのシンボルとして、クラフトコーラが脚光を浴びるようになった。

「居酒屋で乾杯するとき、諸事情でお酒を口にできない方もいらっしゃると思います。特別なお酒で皆さんが乾杯されるのであれば、特別なソフトドリンクで一緒に乾杯したいはず。そこで、肉料理と相性抜群のスパイスで構成されたこだわりのクラフトコーラを提供するお店が、増えているようです」

 さらに、今年から小資本メーカーによる缶タイプのクラフトコーラも販売され始めている。すぐ飲める瓶タイプのクラフトコーラは、例えば「伊良コーラ」であれば500円台で販売されていたが、同メーカーの缶タイプのクラフトコーラは200円台で購入できる。

 缶タイプの登場で、より多くの人に安価で大量に生産する体制が整うのではないかと予想されている。ただ、その一方で既存の清涼飲料の生産方法に近づいてしまうと、悩むメーカーも多いようだ。

「私は『クラフトコーラのジレンマ』と呼んでいますが、クラフトコーラを安価にたくさんの人へ届けようと努力していくと、手作り感のある生産方法にはどこかで無理が生じてくるとは思います。クラフトコーラを丁寧に生産してきたメーカーが、このジレンマをどう乗り越えていくのか、また落とし所をどこにするのかが、今後の見どころとなりそうです」

 歴史の浅い飲み物ではあるが、一過性のブームにとどまらないポテンシャルを秘めているクラフトコーラ。今年の蒸し暑い日々は、おいしいクラフトコーラを楽しみながら、軽快に乗り切りたい。

●プロフィール
空水りょーすけ氏
国際クラフトコーラ連盟(FICA)副理事長、コーラ専門サイト「コーラ倶楽部」管理人、コーラ専門情報メディア「Cola-Fan」編集長。10年ほど前にコーラ趣味を志し、今までに飲んだコーラは600種類以上。「コーラとは何か?」という疑問の答えを見つけるために活動している。