給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。
成長トレンドが続いているか、
停滞しているのかを確認する
決算短信の最初のページには、財務諸表全体の概要が簡単に記されていますので、ここを見て、この会社のだいたいの状況を把握しましょう。
その中でまず売上高や営業利益などの収益状況を見て、成長トレンドが続いているのか停滞しているのかを確認します。決算短信の最初のページ(もしくは次のページ)には、業績の結果と予想が合計で3年分載っています。
実例を見てみましょう(下図)。この決算短信では、上のほうに2022年6月期の連結業績とあって、そこに2022年6月期の業績が記され、その下には2021年6月期の業績も書いてあります(①)。これらは、すでに終了した年度の結果です。
一番下には、2023年6月期の連結業績予想が記されています(②)。第2四半期(累計)とあるのは、最初の6ヵ月間の業績予想です。
そして、通期と書いてあるほうが2023年6月期の1年間を通した業績です。3年分の業績を整理すると、次の図のようになります。単位は百万円となっている項目が多いですが、百万円単位の場合には、下2ケタを隠すと残りの部分が億円単位となります。
売上高は、四捨五入して→640億円→733億円→877億円と拡大傾向が続き、新年度も続きそうなことがわかります。
営業利益は、25.6億円→28.7億円→62.6億円となっています。新年度はコロナ禍の影響も少なくなり、大幅に利益が改善される予想です。
経常利益は、42.7億円→61.7億円→62.5億円となっています。営業利益と違い、経常利益は新年度の伸びが今一つです。これは後ほど詳しい資料を見るとわかりますが、2021年6月期と2022年6月期には、コロナ関連と思われる助成金が大きく経常利益に加えられていたことが原因と考えられます。おそらく新年度は、これが大きく減少するか無くなるという想定なのでしょう。
そうしたことを考えると、このケースでは営業利益のほうが会社の実態を表しており、業績はコロナ禍も乗り越えて、順調に拡大傾向が続いている様子がわかります。
財政状況については貸借対照表、
キャッシュフローの状況はキャッシュフロー計算書をチェック
その他、決算単身の図を見ると、財政状況やキャッシュフローや配当の概要が書かれています。
財政状況については貸借対照表、キャッシュフローの状況はキャッシュフロー計算書に詳細が書かれています。なお、キャッシュフローの情報については、多くの企業は年に1回本決算の資料にだけ掲載されます。
決算短信の2ページ目以降は、発行済み株数の状況や単体決算の概況が出ていて、さらに、事業の状況や財務状況やキャッシュフローの状況が言葉で説明されているページが続きます。このページで、数字だけではわからない定性的情報がある程度、得られます。
そして、その後に、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の財務3表やその他の財務資料が記載されています。
次に、財務3表の見方について詳しく説明していきましょう。
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/