道具のいらない動作で攻撃を食いとめる

書影『攻撃する人の心理がわかる本』『攻撃する人の心理がわかる本』(自由国民社)
高品孝之 著

 ただし、いくら好きだからといってギャンブルや風俗はいけません。社会的な体面がよいものを選びましょう。これは「世間体ではなく、自分が夢中になれるもの」という条件と矛盾するように見えますが、おおっぴらに人に言えないことをしていると、罪悪感や羞恥心により心の健全から離れていってしまうためです。また、飲酒や喫煙は「健全な没頭」というよりは、どちらかといえば中毒なので適当ではありません。

 もちろん、「仕事が趣味」というのもいけません。義務感が伴うものはリラックスできません。あくまでも、完成を求めず、好きな時に始めて好きな時に終われるものがいいでしょう。

 没頭できるものを見つけるのは、簡単ではありません。「完璧主義タイプ」の人などは「全部道具をそろえなければ」などと考えてしまうかもしれませんが、自分に合ったものに出会うまでは、できるだけお金をかけすぎない方がよいでしょう。

「健全な没頭」といわれても、衝動的な怒りの爆発から、とっさに没頭モードに入ることはなかなかできそうにないという人もいるでしょう。そこでもう一つ、「心の癖」を使って「怒りの元」の発動を食いとめる方法をご紹介します。

「せっかちタイプ」の私の友人は、自暴自棄な思いがわいてきたら、とっさに素早いパンチの動きをします。彼は「成功するな」の怒りの元を持っているので、「どうせ自分にはうまくいくはずない」という怒りがわいてしまうことがあるそうです。その瞬間、シュッとパンチを空中に向かって3発放つのです。また、重要な仕事に取り組む前など「成功するな」に邪魔されそうな時は、トイレや更衣室などであらかじめパンチの動作を行います。「せっかちタイプ」の急ぎたい衝動を素早いパンチの動きを行うことによって満たしてあげているのです。

 さらに、「パンチによって急ぎたい衝動が満たされたのだから、あとはゆっくりやって自分を大切にしよう」と自分に言い聞かせているそうです。そのせいか、友人は仕事がうまくいかなくても自暴自棄になることはないそうです。

 このように、「特定の動作を行う+アロワーを与える」ことをセットで行うのは、怒りの元による攻撃を食いとめるにはとてもよいと思います。

 ぜひあなたも、どこでもできて、できるだけ道具のいらない動作を何か考えてみてほしいのです。