まずは犠牲者のポジションを抜け出そう

 一番大切なのは、人間ドラマの三角形の迫害者と犠牲者のポジションが固定される前に三角形のローテーションを回してしまうことです。

 犠牲者のポジションに固定されてしまうと、そこから抜け出そうという意思がなかなか湧きません。ですから、できるだけ早く行うことが重要です。

「反撃する」と意思を固めるより前に、「私は犠牲者にならない」と固く決意することが重要なのです。飼育され、サンドバックにならないことです。

 いじめられる側がよいサンドバックになると判断されてしまうと、いじめの火はどんどん燃え広がり、最悪の事態を招きかねません。「死の欲動」が働き、相手を「無機質にしたい、意味のないものにしたい」という欲求が強くなってしまうためです。

 もしも犠牲者の位置に自分が置かれたら、心の中でポジションを替えるために、まず何をすればよいでしょうか。

 それは、犠牲者を新たにつくることです。そして、自分は救済者のポジションに移動するのです。犠牲者の位置に誰かを据えることで、自分は犠牲者にならずに済みます。

 といっても、迫害者に別の人をいじめるように仕向けるのではありません。犠牲者というのは、あくまで「想像の中での犠牲者」です。

 あなたが犠牲者のポジションにいたとしたら、心の中に別の犠牲者をつくりだし、あなたは素早く救済者のポジションに回るのです。

 新たな犠牲者は、迫害者の利益や損失に関わらない人物であることが望ましいでしょう。ご自身が深く思いを込められる人が理想的です。

 新たな犠牲者として据えるのにふさわしいのは、普段あなたのことを心配してくれている家族、例えば、両親や配偶者、お子さんなどです。いじめの現場と関係ない親友などでもよいでしょう。

「私がいじめを受けることで、妻(夫)がとても悲しむ」とか、「心労でお母さんの健康が損なわれる」など、あなたへの攻撃が間接的に新たな犠牲者への攻撃になるとの認識を持つことが大切なのです。