毎年平均100名近い海外機関投資家と面談しているニコン現CFOの徳成旨亮氏によると、海外機関投資家との面談で、頻繁に「君たち(日本経済・日本企業・日本人)には『アニマルスピリッツ』はないのか?」と問い質されてきた、という。
海外投資家は、日本の社会や企業経営を、血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態にあると見ている。結果、日経平均は1989年の最高値を未だ更新できておらず、水準を切り上げ続けている欧米株と比べて魅力がないと言われても仕方がない状況だ。
この現状を打破するにはどうしたらいいか? 徳成氏は、「CFO思考」が「鍵」になるという
朝倉祐介氏(アニマルスピリッツ代表パートナー)や堀内勉氏(元森ビルCFO)が絶賛する6/7発売の新刊『CFO思考』では、日本経済・日本企業・日本人が「血気と活力」を取り戻し、着実に成長への道に回帰する秘策が述べられている。本書から、一部を特別に公開する。

「事務系」ビジネスパーソンこそCFOを目指すべき理由とはPhoto: Adobe Stock

「事務系」ビジネスパーソンの
最上位はCFO

 少なくとも30代以下の方は、人生の大半を「失われた30年」のなかで過ごしてこられました。人口減少や高齢化など日本の将来に明るい話題を見出しにくい時代だったと思います。特にこの10年近くは金利がずっとゼロ%近くで、給料もあまり上がらない時代でした。

 しかし、日銀の異次元の金融緩和もそろそろ終わりが近づいており、賃上げ・ベースアップ、インフレ、金利上昇という昭和世代には懐かしい言葉が、再び現実のものになりつつあります。

 一方で、企業経営者の立場から申し上げると、従業員の給料については、ペイフォーパフォーマンス、すなわち業績・成果連動型の給与体系とせざるを得ません。どの企業も優秀人材を欲しがっています。パフォーマンスを上げてくださる人には多く払う用意がどの企業にもありますが、そうでない場合はそれなりの処遇となってしまいます。

 では、優秀人材になるには、どうすればよいのでしょうか。

 企業や職種によって評価のポイントは異なりますし、一概には言えませんが、本書を手に取っておられるビジネスパーソンが事務系と呼ばれる方々で「ファイナンス」に興味か関心がある方々だと仮定すると、ずばり、将来「CFO」になるつもりでキャリアパスを描いていただきたいと、期待を込めて思います。

 CFOが所管する、あるいは関与する範囲は、従来の経理・財務を超え、気候変動対応を含むサステナビリティやIT、さらに人的資本経営にまで広がりつつあります。

 また、いずれ日本企業の経営体制が、現在の文鎮型組織からCスイート制(こちらの記事参照)に近づいていくとすれば、人事部や総務部など本社間接部門で働いている皆さんの最終的な上司も、CFOになる可能性もあります。

 すなわち、経理・予算・税務・財務といった伝統的な経理・財務担当役員の部下の皆さんだけでなく、サステナビリティ・ESG、DX・IT、内部管理、リスク管理、内部統制、さらには人事・総務まで、おおよそ「事務系」と呼ばれるビジネスパーソンの最上位がCFOという役職になると仮定すれば、最初からCFOを目指すことが合理的、ということになります。