徳成旨亮
『CFO思考』【試読】
ダイヤモンド・プレミアム(有料会員)ならダイヤモンド社のベストセラーが電子ブックでお読みになれます!月ごとに厳選して提供されるダイヤモンド社の話題の書籍から、ここでは一部を抜粋して無料記事としてお届けします。全体をお読みになりたい方はぜひダイヤモンド・プレミアム(有料会員)にご登録ください!今回は2024年10月提供開始の『CFO思考』。4年連続「ベストCFO」を受賞した著者が、スタートアップや大企業、官庁などで働く全ての組織人に贈る未来に向けたメッセージとは?

CFOのマインドセットが変われば、日本経済は変わる【書籍オンライン編集部セレクション】
徳成「たとえば『ここまでのマイナスを許容するとすれば、このぐらいのキャッシュや資本は使えるから、ここまで使いましょう』と他の役員を調整して回る、といった役割ですね。すでに確立されている企業のCFOが、そんなふうに前向きにマインドセットを変えるだけでも世の中は少し変わっていくかな、と思うのです」

新入りCFOは「コロナ禍で主力事業の1つが販売台数ゼロ」の状況をどう立て直したのか【書籍オンライン編集部セレクション】
2020年の4~6月期、それまでニコンの収益を支えてきたFPD露光装置の売上台数はゼロとなりました。企業にとって、売上がゼロという事実ほど恐ろしいものはありません。いくばくかでも売上が立ちキャッシュが入ってくれば、コスト削減などで企業を存続させる方策はありますが、売上がゼロというのは想像を絶する危機的状況です。

日本の大企業は、世界的には「中小企業」にすぎない
徳成 世界において、大企業、ラージ・キャップと定義される線引き的な基準が、138億ドルなんです。つまり、2兆円ほど。それ以上の時価総額がある会社が、大企業とみなされるわけです。これ、調べてみたら日本に約90社しかないんですよ。

スタートアップ経験者が日本の大企業に戻ってこないと、日本は厳しい
徳成 実際にグローバルに戦っているのはそのJTCたち、時価総額〇兆円という大企業たちです。だからJTCを良くしていくためにも、スタートアップで経験を積んだ方々にはまた戻ってきてほしいなと思います。何だったら会社経営をやってほしい。そうじゃないと、日本は厳しい。

「大学生時代が知的レベル最盛期」の人がこれから見直すべきこと
堀内 大学に入った時点が知的レベルの頂点で、そこからひたすら落ちていくというようなことになると、勝負の勝ち負けどころか勝負にもならないなという感じがあって。そこも見直す必要があると思うんですよね。

世界で活躍できる子どもに育てるために親ができること
堀内 いくらお金があっても、とにかく受験勉強をさせていい大学に行かせて、それでいわゆるJTC(伝統的な日本の大企業)に就職したら嬉しいというような価値観の親だと、けっこう厳しいなという思いもあって。相変わらず昭和の価値観を押し付けるような親のもとで育ってしまうと……。

イギリスが日本と比べて国際社会で圧倒的に存在感が高いのはなぜか
堀内 GDPというのはフローを表現しているものですから、企業で言えば粗利益と言うか、PLの項目に相当するものです。そこで私たちはPLが大きいとか小さいとか競っているかもしれませんが、そもそもBSが超優良で含み益が山のようにある。イギリスの上流教育というのはそうした感じなんですよね。

日本が国際社会でルールメイク側に立てない原因は「真面目すぎる気質」にあった
堀内 もともと悪いことをして儲けようと思っていない日本人に、悪いことをしても儲けようと思っている人たち向けのルールを持ってきているわけですから、出ていないクギをさらに打って引っ込める、みたいなことになってしまいがち……と僕は思うんですね。

日本にはまだ資本主義が根付いていない
徳成「日本は本当に資本主義の歴史が浅くて。所詮、昭和以降なんですよね。明治時代に開国して、いろんな資産が蓄積されて財閥もできたんですけど、第二次世界大戦でバサッとゼロに戻ってしまった。そこからのまたやり直しなので、結局は数十年の歴史なんですよ。そうなると、やはり100年以上も資本主義をやってきた人たちと、借り物で資本主義をやっている僕たちとでは、行動原理が根本的に違う」

CFOになるのに必要な資質とは
徳成「CFOは変化に強くないとやれない。僕は経理のことしかわからないんだよね、それ以外は興味ないしやりたくないんだよね、と言っていては務まらないのです。むしろ、それをおもしろいと思えなければ、CFOの資質はないということになるかもしれません」

私たちは資本主義の限界にどう立ち向かえばいいのか
徳成「私はずっと地球環境問題の解決においては、温室効果ガスの排出権取引に代表されるように、経済合理性の仕組みを入れることでしか、最適解は見つからない、と考えています」

CFOほどおもしろい仕事はない
徳成「どうせ企業経営をやるなら、自分のアジェンダがコロコロ変わるというか、次はこれ、次はこれってなるほうが、絶対楽しいと思うんですよ。『さまざまな困難をクリアしていくゲームをしながら、しかも給料がもらえるなんて、良いじゃない。失敗しても、命まで取られるわけじゃないんだから』。 CFO業に限らず、そう思って仕事をしていったほうが人生は楽しいよって、部下にも言っているんですけどね(笑)」

なぜ日本ではスタートアップは盛り上がらないのか
朝倉「CVC等がスタートアップに直接投資をする際、担当の方々は往々にして『うちが求めているのはシナジーの創出であって、ファイナンシャルなリターンは二の次だ』と言われます。その結果、出資を受けたスタートアップが投資をした大企業に歩調を合わせることを求められ、下請けのような扱いになってしまうことが、時としてあります」

保守的な大企業でも「チャレンジする姿勢」を育てられるか
徳成「そうやって、10のうち1とか2は違うことをやる、ということを意図的にやっていかないと、人間はどうしてもルーティンに流れてしまいますから。そのほうがラクですからね。それは、組織レベルでも個人でも同じです」

CFOのマインドセットが変われば、日本経済は変わる
徳成「たとえば『ここまでのマイナスを許容するとすれば、このぐらいのキャッシュや資本は使えるから、ここまで使いましょう』と他の役員を調整して回る、といった役割ですね。すでに確立されている企業のCFOが、そんなふうに前向きにマインドセットを変えるだけでも世の中は少し変わっていくかな、と思うのです」

ニコンはどのように「サステナビリティ」を「成長のドライバー」にしようとしているのか
ニコンでは、コア技術による社会価値の創造を経営戦略の基軸に据え、サステナビリティ戦略と成長戦略を一体のものと考え、中長期の企業戦略を策定しています。すなわち、光学技術と精密技術というコア技術を活かしたビジネスで、環境課題(E)や社会課題(S)の解決を図り、サステナブルな社会の実現に貢献することで企業としても成長する、そうした姿を目指しています。

ニコンが9カ月で二度も賃上げした理由とは
約9カ月で二度の賃上げになるわけですが、ニコンがこうした大胆な処遇の改定に踏み込んだ背景には、多様な人材の能力を最大限引き出さないかぎり、世の中を変えるようなビジネスは実現できない、という考えがあります。

新入りCFOは「コロナ禍で主力事業の1つが販売台数ゼロ」の状況をどう立て直したのか
2020年の4~6月期、それまでニコンの収益を支えてきたFPD露光装置の売上台数はゼロとなりました。企業にとって、売上がゼロという事実ほど恐ろしいものはありません。いくばくかでも売上が立ちキャッシュが入ってくれば、コスト削減などで企業を存続させる方策はありますが、売上がゼロというのは想像を絶する危機的状況です。

40年前は、米国企業の6割がPBR1倍割れだった
1982年時点では、米国の上場企業の約6割の株価がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの状態、つまり、今の日本と同じく、過半数の米国企業の時価総額が解散価値を下回っていたのです。しかし、米国は、この時期から復活への道を歩み始めます。終身雇用的慣行が薄まって人材の流動化が進み、新たな企業が生まれ、経済資源の再分配が進んだ結果、数十年をかけて強い米国経済に変貌していきました。彼らにできたのなら、私たち日本人にも経済再興はできるはずです。
