「7時間睡眠」以上でも以下でも死亡リスク上昇、脳寿命をのばす睡眠と覚醒のバランスは?睡眠は、脳という臓器が宿命的に抱え込んだ弱点を補強し、その劣化・老化を最低限にするように働いている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

認知症予防に脳トレは本当に役に立つのでしょうか。認知症のリスクを下げるためには、脳の性質を知った上で脳に負担の少ない生活をすることが大事だと千葉大学脳神経外科学教授の岩立康男氏は言います。そこで今回は『脳の寿命を決めるグリア細胞』(青春出版社刊)から脳にとって最も負担が軽くなる睡眠時間について抜粋して紹介します。

じつは「睡眠=脳を休めること」ではない

 これまでの研究において「眠る」ことが確認されているのは、哺乳類や魚類、昆虫など脳のある生物に限られており、睡眠は脳の維持に必須であると考えられています。脳にとっての睡眠とはどのような意味があるのでしょうか。

 睡眠は脳と体の休息となることは実感できるところです。しかし、一方で睡眠時は覚醒度が低下し動物にとって危険な時間です。捕食者に捕らえられる可能性も高まります。それでもなお、動物は睡眠という営みを排除する方向には進化してきませんでした。

 それはなぜなのでしょうか?

 実は、睡眠には脳を維持していくために非常に重要な意味合いがあるのです。単なる「脳の休息」ではありません。