クリスティアーノ・ロナウドやオリンピック選手などのプロアスリートから一流ビジネス企業にまで、世界のエリートパフォーマーに毎朝、気分も体調も最高の状態になれる「眠りのメソッド」を提供している伝説的な「スリープコーチ」がいる。このたびついにその門外不出のメソッドを著書『世界最高のスリープコーチが教える究極の睡眠術』にまとめた。その「眠り方」のアドバイスについては、本連載の記事「レアル、マンUがやっている『疲れが消える』独特の眠り方」や、「寝る前に『○○』をするだけでグッスリになる理由」でも一部ご紹介したが、本稿では本書から、「睡眠とセックス」についての興味深い問いを取り上げる。(初出:2018年3月7日)
「スポーツサイエンス」主任の意見は?
ボクサーは戦いの前夜、サッカー選手は試合前、短距離走者はレース前に、禁欲を警告されることがある。しかし「セックスがパフォーマンスを阻害するか」については相反する説がある。かえって調子がよくなる選手もいる。あなたはどうだろう?人生の大イベントの前夜に、禁欲をするだろうか?
私の友人で仕事仲間のニック・ブロードは、常々このテーマに興味を抱いてきた。チェルシーFCのスポーツサイエンスの主任である彼は、正しいアプローチを取れば、選手はセックスをかなり効果的に利用できると考えていた。
いいセックスは、ストレスと不安と心配を軽減する強力なツールになり、しかも快感が得られる。刺激的で自発的な行動に心を集中し、我を忘れていまの瞬間を楽しむことができる。自分が愛され、求められていると感じられ、安心感が得られる。ナチュラルなかたちの運動であり(定期的に行うとなおいい)、終わった後に、リラックスして温かい安心感の余韻が残り、とりわけ男性はそのまま眠りに一直線、という人が多い。
そう考えると、セックスは就寝前のルーチンに組み込むのにふさわしいように思える。しかし、セックスをルーチン化するのは、あまりにも興ざめで色気のないことだ。また、ベッドでは眠るのがいちばんの目的だ。セックスは「僅差の2位」なので、セックスの場所をベッドに限るのはやめたいものだ。「ベッド=睡眠」を最優先で関連づけることが大切だ。セックスは他の場所でもできると考えよう。
また、セックスが必ずしもいい結果につながるとは限らない。カップルの片方が乗り気でない場合、拒絶感や強制感が生まれる。片方が満足しないまま行為が終わり、もう片方は無神経に眠ってしまうこともある。セックスによって不安や不満や疲労感が残り、関係にひびが入ることもある。
加えて、体力消耗の懸念もある。とはいえ結論をいうと、寝室で何時間もレスリングのような「運動」にふけって、目標とする睡眠サイクルに差し障らない限り、体力面への影響はほぼないと考えてよさそうだ。