また今回、取締役全員(12人)任期満了につき10人を選任する第2号議案が示されたが、グプタCOOとともに退任したのが豊田正和社外取締役だ。
豊田氏は、経済産業省出身で通商政策のベテランだ。経産省では最終的にナンバー2の経産審議官を務めて、日産には18年から社外取締役に就任している。指名委員会委員長で筆頭社外取締役の重職にあった人物だ。
ルノーが仏政府の意向が反映される会社であるのに対して、日産が日本政府・経産省をバックにした政治レベルでの交渉ができる会社であることは、豊田社外取締役の存在とそのキャリアから推して知るべしだ。
だが、今年2月の資本関係見直しでは、EV特許など知的財産の扱いなどに異を唱えて反対した取締役がいたことで、合意までにかなりの日時を要した。「全会一致なき合意」ともやゆされたほどである。今回の株主総会での取締役選任は、こうした紆余(うよ)曲折があり、従来の12人から10人に減員する形で決着を見たのだ。
そして株主総会後の取締役会で新経営体制を発表し、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)の下に当面、COOは置かないものとし、取締役会議長の木村康氏、副議長のジャンドミニク・スナール氏(ルノー会長)は続投することを決めた。豊田氏の後任の指名委員会委員長にはアンドリュー・ハウス氏が、筆頭社外取締役にはベルナール・デルマス氏が就いた。
新体制でルノー寄りになるのか、日産の経営自由度を強めるのか、まだ予断は許されないと、筆者は受けとめている。