選考終了後や早期退職後にも繋がり続ける重要性

 筆者が経営する会社はまだ規模が小さく、新卒採用は限定的のため、中途採用の話になりますが、毎月数十名の候補者の方と面接をさせていただいております。当然のことながら最終的に入社していただく方よりも、途中で選考が終了する方のほうが数が多くなります。そのため、当社から選考を終了する場合に限らず、候補者側からの選考辞退や内定辞退の場合でも、「ここまでの間、数多くの選択肢の中から当社を働く場所の候補として考えていただきありがとうございます」という感謝の気持ちを、できる限りご本人にお伝えすることを心掛けています。当社のような無名の小さな「採用弱者」にご応募いただいているために、こうした思いを強く意識しやすいということもあるかもしれませんが、「採用強者」であっても、候補者の行動原理は同じです。

 当社は、アルムナイ専用のクラウドシステム『Official-Alumni.com(オフィシャル・アルムナイ・ドットコム)*2 』の提供を行い、企業と退職したアルムナイとの関係構築を支援しています。従来、日本では、退職と同時に縁が切れてしまうのが当たり前でしたが、それを退職後も繋がり続ける関係へと改革しています。その中で私たちが大切にしていることが、退職する側の個人の「辞め方」と、退職される側の企業の「辞められ方」をポジティブなものにする「辞め方改革」です。そのためには、退職後も繋がり続けるアルムナイコミュニティなどの仕組みが重要であり、繋がり続ける前提であるからこそポジティブな「辞め方」をすべきと考えるようになります。

*2 Official-Alumni.comは、ハッカズークが提供するアルムナイ専用クラウドシステム。企業が効率よく運用できる管理機能に加えて、登録するアルムナイのメリットとなるアルムナイ同士のチャットや名簿検索、さまざまな募集ができる機能などが簡単に利用できるツールになっている。

 当初の主な事業は、一度は社員として働いてから退職した人を対象としたアルムナイコミュニティの形成を支援することですが、最近では、『Official-Alumni.com(オフィシャル・アルムナイ・ドットコム)』の活用の幅が広がってきています。事例として、選考辞退者や内定辞退者などの過去候補者とコミュニティを構築する企業も増えてきています。これは一見、自社の採用候補者データベースであるタレントプールのように見られますが、一つの大きな違いは目的を自社の採用だけに限定しないファンコミュニティである点です。企業のニュースや情報を一方的に配信するだけでなく、同じ業界にいる人同士や異業種の人との交流の機会などを提供するなど、元候補者にとってメリットのある施策になっています。

 実際にこのような「過去候補者コミュニティ」を運用するまではしないでも、新卒採用においても選考終了後や早期退職後に繋がり続けるという考えで「辞め方改革」を実現することで、元候補者や早期退職者をファン化することができるのではないでしょうか。