「辞め方」と「辞められ方」――プロサッカークラブに見る“アルムナイ”の大切さ

「人的資本経営」のカギを握る「アルムナイ」。企業が自社の退職者である「アルムナイ」とどのような関係を築いていくかは、人材の流動性がますます高まるこれからの時代において重要だ。アルムナイ専用のクラウドシステムを提供するなど、アルムナイに関する専門家である鈴木仁志さん(株式会社ハッカズーク代表取締役CEO兼アルムナイ研究所研究員)が、企業の「辞められ方」、従業員の「辞め方」を語る連載「アルムナイを考える」――その第3回をお届けする。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

>>連載第1回 「退職したら関係ない!」はあり得ない――適切な「辞められ方」「辞め方」を考える
>>連載第2回 誰もが明日から実践できる「辞め方改革」が、あなたと企業を幸せにする理由

人の持つスキルや能力が「投資対象の資本」になる

 数年前にはあまり耳にすることがなかった「人的資本経営」という言葉ですが、人事の仕事をしている方や人材業界にいる方であれば、いまやSNSの広告などで「人的資本」という言葉を目にしない日の方が少ないのではないでしょうか? 実際に「人的資本」に関する検索のトレンドを見ても、1年ほど前と現在では検索ボリュームに約10倍の差があるようです。バズワード化している感もあり、懐疑的な意見が見られることも事実です。

 人的資本経営という言葉が使われる背景には、もともと広く使われていた「人的資源」という表現が、“人を「消費される資源」として見ること”に対し、「人的資本」という表現においては、“人が持つスキルや能力を「投資対象の資本」とみなす”という考えがあります。そのため、投資家が企業に開示を求める非財務情報の中でもとても重要なひとつと見られていて、人的資本の開示に関するガイドラインである「ISO30414」なども注目を集めています。

 この「人的資本経営ブーム」は日本にとって初めてのものではありません。バランスシートに認識されない無形資産である人的資本をオンバランス化する議論は、ここ数十年の間もずっとされてきていますし、人的資本を意味する「Human Capital」という言葉も1990年代からは日本でも頻繁に使われていました。ただ、その後の日本企業のアプローチは他国に遅れをとった部分もあり、昨今の人的資本情報の開示ブームに合わせて再び注目が高まっている状況です。