バブル後最高値を更新した日経平均株価の終値を示すモニターバブル後最高値を更新した日経平均株価の終値を示すモニター Photo:JIJI

昨年末に「ゼロコロナ」政策を転換した中国で、早くも景気に息切れ感が見られている。不動産問題をはじめ、不安が渦巻く中国経済だが、米著名投資家のケン・フィッシャー氏はそうした懸念が誇張されたものだと喝破。成長率の減速傾向が続いても、株式市場にとって大きな問題ではないと説く。その理由とは。

不動産市場の活況
テック規制の鎮静化…

 中国は失速するだろうか?訪日中国人観光客は徐々に増えているが、日本の最大貿易相手国である中国への輸出は依然低迷している。中国の急成長時代は過ぎ去り、多くの人が今後の悪化を予想する。

 もっとも、慌ててはならない。2年に及ぶ不動産や規制を巡る逆風は終わった。また、日本経済が恩恵を受けるために中国の驚異的成長は不要だ。

 世界中のメディアが、昨年末の「ゼロコロナ」政策終了以降、中国の「期待外れ」な回復を嘆く。だが当時、中国は完全にはロックダウンされていなかった。従って、決して2020年のような爆発的な経済再開に向かっていたわけではない。中国の正常化は、世界の経済成長を促進する材料だ。足元では、他の逆風が消えつつある。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産十数兆円規模の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 例えば、不動産問題を考えてみよう。21~22年の政府規制や中国恒大集団などのデベロッパーを巡る債務問題は、不動産市場の終わりなき混乱に対する不安を生んだ。代わりに、今は政府支援が不動産の回復を後押ししている。

 商業ビル販売価格は4月に70都市のうち63都市で上昇した。懸念された販売済み未完成住宅の残りも解消しつつある。弱気派は、住宅販売戸数が依然コロナ前の水準を下回ると主張する。だが、全ての回復は沈んだ水準から始まる。直線的な回復はまれだ。だから些事にこだわらないことだ――より大局を見よう。

 アリババ再編における政府支援も、大手テック企業への規制取り締まりの沈静化を示唆する。新たなIPOルールも同様で、中国企業は海外上場が再び可能となるかもしれない。停止されていたゲームライセンス発行も再開し、小規模だが注目度の高いゲーム産業を巡る懸念も和らいだ。

 中国の経済成長減速を巡る懸念について、長期的には正しい部分もある。だが、筆者はそれでも中国の「逆風」がTOPIX(東証株価指数)を沈める材料にはならないと考える。なぜか。