利上げ局面の景気後退を「恐れるべきではない」と米著名投資家が考える理由Photo:PIXTA

高インフレやFRB(米連邦準備制度理事会)の度重なる利上げなどを受け、米国などで景気後退懸念がくすぶり続けている。だが、米著名投資家のケン・フィッシャー氏は株式市場にとって、次に迫りくる景気後退は恐れるに足りないと説く。

なぜ「景気後退」を
恐れる必要がないのか

 経済情勢悪化が迫っていると世界中で警告され、金融市場のニュースを覆う。軽度か深刻かを問わず、各種調査ではほぼ誰もが世界景気後退を予想する――そして、これがコロナ禍からの日本経済の本格再開後の回復を必ず下押しするのだと。確かに、そうかもしれない。

 だが、2023年に世界景気後退が実際に起きれば、近代で最も長きにわたって「予期された」景気後退となり、株式への影響力を削ぐ。それは、世界株式やTOPIX(東証株価指数)にとって、予想外に強い回復を見せる下地となる。

 私は約50年にわたり、相場のプロとして資産を運用してきたが、世界景気後退は常に衝撃であり、発生時にはほぼ極めて多くの人を驚かせてきた。発生後かなりの時間がたつまで、その到来を信じる人はほとんどいない。そして、ネガティブな形で驚きを提供する。結果、こうした景気後退は市場に重大な影響力を与えてきた。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産十数兆円規模の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 今はどうか?ほぼ皆が現在、または近い将来の世界経済の悪化を予想している――私が1月の記事で詳述したように、不確かな証拠にもかかわらず。こうした見解は、消費者や投資家を越えて広く当てはまる――今では、企業のCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)に至るまで、幅広い関係者の間で景気後退が予想されている。

 多くのビジネスリーダーは現在、日本が経済再開に伴い、23年は辛うじて成長を実現すると予想する。だが、そこには多くの不安も伴う。(米民間調査機関)コンファレンスボードの調査では、日本のCEOの3分の1以上が、24年中盤を過ぎるまで日本がプラス成長になると考えていない。日本経済研究センターは景気後退確率を8割以上としている。

 世界の雰囲気も、おしなべて悲観的だ。KPMGの調査では、アジア太平洋地域のCEOの63%が景気後退を予想する。コンファレンスボードによると、米国企業のCEOの98%が今後、12~18カ月内の米国景気後退を予期し、99%が欧州の景気後退を予想する。3分の2以上が、欧州の景気後退が深刻で悲惨になると考えている。フィラデルフィア連銀の景気後退確率指数は、記録的な高さにある。

 恐ろしい!だが、理性的に考えてみよう。なぜ、私は株式市場が次に迫りくる景気後退を恐れなくてよいと考えるのか。