新日本酒紀行「喜平静岡蔵」5代目の戸塚堅二郎さん Photo by Yohko Yamamoto

50年ぶりに創業の地、静岡で復活!新進気鋭の純米蔵

 徳川家康は、駿府城を築城した折、安倍川に大規模な治水工事を行い、城郭都市駿府を誕生させた。水は南アルプス水系で伏流水の流量が豊富、川に水が少なくても地下には大量に流れ、「平成の名水百選」にも選定。この安倍川に面して、2012年に静岡県で最も新しい酒蔵、静岡平喜酒造が復活した。元々、静岡で酒蔵を営んでいたが、温暖な気候での酒造りが難しく、縁があった岡山県に蔵を移転し、静岡の方は卸問屋に特化。「祖父には、創業の静岡で酒造りを復活させたい!という強い思いがありました」と、5代目で杜氏を務める戸塚堅二郎さん。技術の進歩により、静岡でも上質な酒造りが可能になったことで、堅二郎さんの父親がコンパクトな蔵を建て、岡山の蔵はそのままに、50年ぶりに里帰りした。

 堅二郎さんは中学生のとき、初めて岡山の酒蔵を見学。酒造りの面白さにはまり、東京農業大学の醸造科学科に進んだ。酒造りの師匠は、岡山の蔵の備中杜氏、原潔巳さんだが、水も気候も違うため、静岡県沼津工業技術支援センターの力を借りて、静岡吟醸の研究を始めた。少量仕込みで丁寧に純米造りのみを行い、醸造期の半年間は蔵にこもって試行錯誤。次第に、果実感のある爽やかな香りとクリーンな味の酒ができ、全国新酒鑑評会で金賞を受賞、雄町サミットでは連続受賞するなど、少しずつ成果も表れた。今は99%が地元での消費だが、生酛造りを試すなど酒質の幅も広げ、静岡の新たなブランドとして次のステージへ挑む。