余談ながら鴻巣市は目下、「こうのす川幅うどん」推しの真っ最中であり、免許をとった人が幅8センチといわれるビロビロの「川幅うどん」(市域を流れる荒川の川幅がいちばん長いことにちなむ)を食した場合、そっちがソウルフードと化してしまう可能性も捨てきれない。

 しかし、「シークレット山田」でひそかに山田うどんを食す快感はたまらないものがある。だってね、店内のお客さんの誰も気づいていないんだよ。教えてあげたくなる。が、わかる人だけわかってればいいので、教えてはあげない。鴻巣免許センターは埼玉人の魂の深部にあるのかもしれないなぁ。バス停近くに「十万石まんじゅう」鴻巣店もあるしな。詩的に表現すれば「埼玉のロードサイドが始まる場所」が鴻巣免許センターなのだ。

うどんを作るエネルギーはうどんから生まれる

 入間市にあるセントラルキッチン(※工場)の社員食堂には「たぬき」「冷やしたぬき」の二種類しかメニューが選べない「山田内山田うどん」があった。山田うどんの従業員は山田うどんを無料で食べてそのエネルギーで山田うどんを作っていたのだ。山田うどんで山田うどんを作る、いわば山田うどん永久機関と呼ぶべき循環だ。あるいは正の山田フィードバックと呼んでもいい。

 ここで検討したいのは一般にはオープンにされていない山田、「クローズド山田」「ゲーテッド山田」の問題である。

 山田を愛する気持ちがどれほど深いとしても一般のお客さんが「山田内山田」に潜入できる可能性はゼロだ。唯一あるとしたら山田で働くしかない。これは熱狂的なディズニー愛好家が東京ディズニーランドで働くケース(実はバイトも含めて、かなり多いといわれる)に似ている。いちばんレアなデイズニー体験のために「中の人」として就労するのだ。だって「中の人」にならなければ例えばミッキーマウスの公式の着ぐるみを着て、ミッキーそのものになる機会は永遠に訪れない。