教授との交渉に活用した
バックキャスティングの魔力
本書で述べたように、米国の大学入学時に私は初めて海外に行った。
英語は読み・書きは多少できたが、聞く・話すは苦手で、正直なところ、最初は授業についていくのが大変だった。
米国の大学の評価は、日本とは異なり、テストの点以外にも授業の出席点やディスカッションの参加点がある。
中間と期末試験を合わせても、その評価割合は全体の半分しかない授業もあった。
ディスカッションはもちろんすべて英語で行われる。
ネイティブが話す英語を聞き取り、ましてや発言することは海外1年目の当時の私には非常に難易度が高かった。
それでも私は「この授業で絶対A評価を取る」という高いゴールを先に設定した。
今思うと完全に開き直りなのだが、実現のために担当教授に次のように交渉した。
「私は留学1年目なので、ディスカッションに参加するのは難しい。
レポート課題を追加でやるので、ディスカッションの参加点として補塡してほしい」
「Aの取得」という目的から逆算し、そのために何ができるか考え直談判したのだ。
実はノーリスク・ハイリターンの交渉
交渉の結果、追加のレポート課題を2つもらい、そこで高い評価を得ることができた。
テストは言い訳ができないのでそこは必死に勉強したが、結果としてディスカッションにはほとんど参加できなかったにもかかわらず、Aを取得できた。
ディスカッション参加点をどうやって取るかという手段に注目していたら、Aを取ることは絶対できなかっただろう。
なお、この事例の場合、担当教授にダメだと言われても失うものがないので、実はノーリスク・ハイリターンの交渉である。
これが再現性があるとは限らないが、達成したい目的のためにやれることを限界まで考えるという習慣は今の仕事にかなり活きている。
(本稿は『1位思考』の一部を抜粋・編集したものです)