子どもの糧となる
失敗の機会を、先回りして奪わない
森野 「失敗しそうでも、先回りせず見守る」ことも必要です。失敗して次はどうすれば良いか考えるのは、子どもにとってすごく重要な経験なんですね。
子どもが可愛いあまり、失敗しないようと親が先回りしてしまうと、大事な成長の機会が奪われてしまう。でも、一回でも失敗してそこから立ち直るのをみると、子ども自身にも自信がつきますし、親自身に自分の子どもに対する自信と信頼が身について、一歩引いた場所で待っていることができるという、よい循環がはじまっていきます。
これは、親の側も練習していく必要があります。子どもが失敗しても、本当に大変なことにはならないようにちゃんと見ていて、必要な手助けは準備する。本人が同じ失敗を避けるために次はどうしたらいいかを考えるのも大事です。
たとえば、とんでもないことをやらかした。最後までやれなかった。そういう場合、子どもの中には必ず理由があります。そこを理解して、詰問にならないように、ニュートラルに子どもの話を聞いてあげられるようになるといいですね。あと、子どもは常に発達の途上で、どうしても、大人より上手にものを言えない。そこは子どものレベルに合わせて話をしていく必要があります。
児童精神科医として伝えたい、
親御さんに、ひとつだけやっていただきたいこと
森野 最後に、児童精神科医として、ひとつだけ、親御さんにやっていただきたいことをお伝えします。それは「ありのままのあなたでいてくれればいいよ」というメッセージを、お子さんに伝えていくことです。それは、他の人にはできないことなんですね。そのメッセージが、人への信頼感やその子の自信とか、生きていくためのエネルギーになる。それさえ与えてくれれば、あとはいいんです。あとはおまけなので。
── なんだか、すとんと気持ちが楽になりました。私が昔から惹かれるのは「その人らしさ」なんですが、それは何かを付加させようと頑張るのではなく、その子の本来のもち味をそのまま受け止めて、日々気負わずに育んであげたらいいんですね。
先生が絵本に寄せてくださった文章で、すごくいいなと思う一文があります。それを、ここまで記事を読んでくださった方にご紹介して、インタビューを終わりにしたいと思います。本日はありがとうございました。
森野 ありがとうございました。