子育て中の親の悩みが幸せに変わる「29の言葉」を集めた新刊『子どもが幸せになることば』が、発売前から注目を集めています。
著者は、共働きで4人の子を育てる医師・臨床心理士で、20年間、5000回以上の面接を通して子育ての悩みに寄り添い続けてきた田中茂樹氏。親が「つい、言ってしまいがちな小言」を「子どもを信じることば」に変換すると、親も子もラクになれるという、心理学に基づいた「言葉がけ」の育児書です。
この記事では、子どもが不登校(登校拒否)になったとき、親がやってしまいがちな対応と、その「代案」を紹介します。(構成:編集部/今野良介)
「もう一生学校に行かない!」と言える子はまだ、元気がある。
不登校気味になった、小学1年の男の子。その母親との面接でのことです。
入学後すぐから行き渋っていたそうですが、ここ2ヵ月ほど、なだめたり叱ったりしながら、なんとか登校させている状況だったようです。
そのことで両親は、とくに母親は疲れきってしまって、いつもイライラしていました。子どもと向き合っていても、すぐに泣いたり怒ったりしているそうです。
このような場合に、私は、子どもの行き渋りの原因がわからなくても、まずは家でしっかりリラックスして、親も子もいったん落ち着くことを提案します。
指示や命令の言葉をできるだけ使わない。「もう無理に行かせようとしない」と、ハッキリと子どもに伝えることをすすめます。
そうすると、その子は朝、母親が起こさなくても起きてくるようになりました。
ただ、「学校にはいかなくていいんだよね?」と、その子が毎朝何度も尋ねるので、そのたびに母親は「行かなくていいよ」と返しました。
数日すると、朝ごはんもしっかり食べるようになりました。以前は何度もうながして食べさせていたのに。
そんな感じで、1週間ほどすごしました。
担任の先生と電話で、母親が子どもの様子を話したときのこと。
電話を切った母親のところに、子どもがやってきて、こう言ったそうです。
「先生に言っといて。僕は2年生になっても学校行かないって。もう一生学校に行かないって言っといて。僕は絶対に学校に行かないから、来るかどうかも聞かないでくださいって言っといて!」
久しぶりに聞くような大きな声で、しっかりとそう言ったそうです。
母親は、この言葉にショックを受けました。
「やっぱり無理にでも行かせていたほうが良かったのではないか」
「行かなくてもいいと接してきたから元気になったけれど、『もう学校に行かなくてもいい』と子どもは思いこんでしまったのではないか」
そう、心配していました。
「一生、行かない!」と言われてしまうと、親としては困りますし、不安になるのも当然です。
ただ、大人の思う「一生」と、子どもの思う「一生」は違います。子どもはよく「おまえとはもう一生口聞かない!」なんて言ったりしますが、次の日には遊んでいたりしますよね。
だからといって、子どもの「一生」という言葉は軽いものだと言いたいのではありません。
一生学校に行きたくないくらい嫌な気持ちだったし、いまもそんな気持ちだ、ということだと思います。
だからこそ、親は、「そんなこと言わないの!」とか「一生学校行かないでどうするつもりなの!」などと叱ったりするのではなく、「それぐらい嫌だったんだね」などと、気持ちを受け止めてあげるような言葉をかけるのがよいでしょう。
「今日、行かなくてもいい?」と、うじうじ、くよくよしていたときよりも「学校なんか、一生行くか!」と言えるほうが元気は出てきているのです。
私は、認知心理学や脳科学の研究、20年以上のカウンセリングを通して、子どもは、「自分から幸せになろうとする本能」を持っていると確信しています。元気になれば、「自分が幸せになるためにはどうしたらいいのか」を考えて、自分から動き始めます。
どちらが、より深刻だと思いますか?
たとえば、朝起きるのが難しくなってきて、不登校になりかかっているという子どもの相談だとします。
[1]子どもが「学校に行きたくないから、起きたくない」と言っている場合
[2]「学校に行きたいのに、起きられない」と言っている場合
あなたは、どちらが、より問題が長引きそうだと思いますか?
どちらが、子どものエネルギーがより失われていると思われますか?