ベテランのエコノミストであり、銀行幹部などを歴任した潘功勝氏(60)は、中国人民銀行(中央銀行)のトップに指名されるまでの数週間、いつでも引退できる準備を整えていた。事情に詳しい複数の当局者はそう明かす。だが潘氏は今や次期総裁として、喫緊の課題に直面する人民銀の指揮を執ることになった。同国の通貨・人民元を防衛するかどうか、またいかにして防衛するべきかという問題に取り組む。世界2位の経済大国の景気が停滞する中、今年に入って元安が進んでいる。エコノミストや一部の政府当局者は、これが急落に転じ、中国の金融システムを不安定化させる事態になりかねないと危惧している。だが元を下支えすることは別のリスクを伴う、とエコノミストらは指摘する。中国経済の成長鈍化を招き、ひいては世界経済の成長鈍化につながる可能性がある。