ユーザーファーストの姿勢が「TikTok売れ」を生む
大量にあふれるショート動画が延々と流れるTikTok。じつは、今日ではマーケティングの観点からも、若者世代の消費動向を左右するメディアとして注目を集めています。現に、TikTokを起点に次のようなヒットが生まれています。
・1989年に作家の筒井康隆氏が発表した小説『残像に口紅を』が突如、アマゾンのランキングで一時9位に浮上。1カ月で8万5000部の重版に。
・地球儀の形をしたお菓子「地球グミ」が、ハッシュタグ「#地球グミ」約5億再生で品切れ状態に。類似商品の「ラムネ餅」にも波及して大ヒットに。
・大阪府の不動産会社が広告費削減を目的にTikTokで物件紹介の動画投稿をはじめたところ、月に100件もの問い合わせ、60件の契約を実現。
過去に発表した小説や、メーカーが広告宣伝に力を入れていない定番商品が突如大ヒットするこれらの現象は「TikTok売れ」といわれ、『日経トレンディ』の「2021年ヒット商品ベスト30」特集でも「TikTok売れ」のワードが1位になりました。
いまの若者世代は、ほしいものの検索にグーグルなどの検索エンジンではなく、TikTokを使っています。「ググる」ならぬ「Tokる(トクる)」という言葉も生まれているほどです。
このようになぜ、TikTokが若者世代のトレンドの「震源地」となっているのでしょうか? 理由のひとつとして、ユーザーが楽しく動画を投稿できるようなユーザーファーストのプラットフォーム設計が挙げられます。
TikTokの公式楽曲はJASRACとパートナーシップを締結しており、ユーザーは無料で使用することができます。TikTokからヒット曲が生まれることも珍しくありません。
また、いわゆる「盛れる」フィルター機能が充実しており、ユーザーは思い思いに動画を加工して投稿を楽しんでいます。スマホひとつで思い思いの投稿を楽しめる「エンターテインメント性」やフォロワーがつくことで自己肯定感が上がるような仕組みが、多様な動画コンテンツを生み、流行を創りだしているといえます。