「15分」のYouTubeより「15秒」のTikTok

 常にストレスのない、シームレスな購入の機会を提供するために、世界のテック企業はどうしているのでしょうか? これから具体的なケースとともに見ていきますが、キーワードは「動画ファースト」です。

 世界のコミュニケーションは、言語を中心としたものから動画による非言語コミュニケーションへとシフトしています。5Gや、高機能カメラつきスマートフォンの登場で、いまでは誰でも高機能の動画を撮り、インターネット上に投稿できる時代になったことが背景にあります。言語コミュニケーションと異なり、動画のような非言語のコミュニケーションは、直感で瞬時に受け取ることができます。

 この動画コミュニケーションの広がりに加え、決済機能や配送機能が世界各地で整備されたことで、「動画 ×EC」のプラットフォームが国境を越えて成長しています。世界が言語の壁を越えて「動画=非言語」でつながる時代、「動画コミュニケーションを制する企業が世界のマーケットを制する」といってもよいでしょう。

 その「動画ファースト」時代のトップランナーは、日本でもおなじみの「TikTok」です。

 若者世代はわずかなすき間時間を見つけてはTikTokのアプリを開き、15秒ほどのショート動画を「呼吸」するように視聴しています。本国の中国ではEC事業も展開しており、ふと目にした商品の動画や、人気ライバーのライブ配信を見ながら、買い物体験を楽しんでいます。

 彼らにとっては、もはや15分のYouTube動画すら苦痛でしかありません。15秒の間に、彼らの琴線に触れるようなメッセージを届けられるかどうかが「流れ」を止めない買い物体験の成否を分けるのです。