会見で頭を下げるイメージ写真写真はイメージです Photo:PIXTA

いまや毎日のように発生するSNSなどでの「炎上」。ブランドや経営にとって致命的となり兼ねない炎上に対し、企業はどう対応するべきか。事態収拾における3つの心構えや昨今よく耳にするコンプライアンスの捉え方をプロが解説する。※本稿は新田龍『炎上回避マニュアル』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

炎上発生時における
「3つの心得」

「炎上マーケティング」という言葉がある。これまで誰からも知られていなかったような会社や人物であっても、炎上してしまうことで一気に知名度が上がり、多額の費用をかけることなく、多くの人から認知される効果を狙ったものだ。とはいえ炎上によって広がるのは「評判」というより「悪評」のほうであるから、決して望ましい手法ではないのだが、そこまでしてでも周知という効果を得たいものなのだろう。

 良くも悪くも、炎上がそれだけ注目されるということは裏を返せば「気づいた頃には手遅れ」ということになる。元の発言や投稿はすでに多くの人の耳目に触れてしまっており、すぐに削除したとしても、既に誰かがテキストや画像、映像を保存しているため、「消したということは、何かやましいことがあるんだ!」とばかりに、削除前より却って増えてしまうなどということが起きる。この現象のことを指す「ケストフエールの法則」というネットスラングも存在するほどだ。

 筆者は「レピュテーション(評判)改善」の専門家として、炎上トラブルの解決や、そこからの信用回復にも多数携わってきた。繰り返しになるが、炎上が発生してから事態収拾するために要する労力、お金、時間などはあまりに膨大であり、組織の貴重なリソースを激しく無駄にしてしまう。炎上対策の基本は「そもそも発生させない」こと。そのために予防体制を徹底するのが一番である。

 まずは炎上発生時における、基本的な心構えから解説していこう。細かく述べると多数の事項にわたるが、シンプルに要素を3点のみ挙げておきたい。

1:落ち着いて現状把握
2:迅速対応(ただし拙速は避ける)
3:積極的な情報開示

 炎上は当事者のあずかり知らないところで進行するものであるため、「発覚時には既にネガティブな情報が回収不可能な状況まで拡散している」という前提を認識しておく必要がある。したがって、「一刻も早く対応しないと、企業の存続危機にもなり得る非常事態である」との覚悟で迅速に事態収拾にあたることが求められる。

 ただし、迅速な対応が必須である一方、「拙速」を避けなければならないのがややこしいところだ。これまでも、状況把握が不十分で、慌てておこなった対応が「その場しのぎ」「取り繕い」などと、却って批判を呼ぶ結果に至ったことは多々ある。具体的にはこのようなものだ。

・組織として公式に対応する前に、炎上原因となった投稿を、何の説明もなく削除してしまった
・原因究明を実施する前に、「自社には責任はない。我々はむしろ被害者である」といった主旨の発表をしてしまった
・疑義や批判を受けて謝罪表明を公開する際、自社Webサイト上ではなく、外部のテキスト作成ツールやPDF資料によっておこなった(それによって炎上事案にまつわるキーワードで検索しても発見されづらくなるため、隠蔽の意図が疑われた)
・謝罪文においても、自社の違法性が疑われる行為について明確に言及せず、「不適切な表現」といった記述に留まっていた
・組織の正式な広報窓口からの公式発表がなされる前に、経営者や関係者、従業員などがそれぞれ勝手に私見をコメントとして公開した

 実際に過去、炎上時に発生したこれらの対応は、混乱の渦中では致し方なかったのかもしれないが、結果として「ネガティブな情報をあえて見つけにくくして、隠蔽工作しようとしているのでは?」「批判が自然に収まるのを待って、フェイドアウトを狙っているのでは?」「社内が混乱していて統制がとれていない。実は未熟な組織なのでは?」といった形で、むしろ疑念が拡大してしまった。それゆえ、本来なら「局所的な騒ぎ」で済んでいたものが、「全国規模の炎上」へと発展し、結果的に深手を負ってしまうことになったケースもあった。