いまや毎日のように発生するSNSなどでの「炎上」。ブランドや経営にとって致命的となり兼ねない炎上に対し、企業はどう対応するべきか。事態収拾における3つの心構えや昨今よく耳にするコンプライアンスの捉え方をプロが解説する。※本稿は新田龍『炎上回避マニュアル』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。
炎上発生時における
「3つの心得」
「炎上マーケティング」という言葉がある。これまで誰からも知られていなかったような会社や人物であっても、炎上してしまうことで一気に知名度が上がり、多額の費用をかけることなく、多くの人から認知される効果を狙ったものだ。とはいえ炎上によって広がるのは「評判」というより「悪評」のほうであるから、決して望ましい手法ではないのだが、そこまでしてでも周知という効果を得たいものなのだろう。
良くも悪くも、炎上がそれだけ注目されるということは裏を返せば「気づいた頃には手遅れ」ということになる。元の発言や投稿はすでに多くの人の耳目に触れてしまっており、すぐに削除したとしても、既に誰かがテキストや画像、映像を保存しているため、「消したということは、何かやましいことがあるんだ!」とばかりに、削除前より却って増えてしまうなどということが起きる。この現象のことを指す「ケストフエールの法則」というネットスラングも存在するほどだ。
筆者は「レピュテーション(評判)改善」の専門家として、炎上トラブルの解決や、そこからの信用回復にも多数携わってきた。繰り返しになるが、炎上が発生してから事態収拾するために要する労力、お金、時間などはあまりに膨大であり、組織の貴重なリソースを激しく無駄にしてしまう。炎上対策の基本は「そもそも発生させない」こと。そのために予防体制を徹底するのが一番である。