この職場には、床から天井までの明るい窓や抹茶が飲めるカフェがあり、ヨガやダンスの無料レッスンが行われている。従業員は毎月開かれるチームビルディング集会に参加し、ビールを飲んだり、ゴーカートを走らせたり、ボーリングに出掛けたりする。ここは米グーグルではない。ベトナムの縫製工場だ。アジアは世界の製造拠点として米国人が購入する製品の多くを供給するが、いま大問題にぶち当たっている。若者たちが概して工場で働きたがらないのだ。だからこそ、この工場は製造現場をより魅力的にしようと取り組んでおり、アジアの安い労働力を頼りに安価な消費財を大量生産する西側企業には警鐘が鳴り響いている。超安価なアジアの製造業労働力に衰退の兆しがあることは、グローバル化した製造業モデルに突きつけられた最新の課題として浮上している。このモデルは過去30年間、多岐にわたる製品を安く生産し、世界中の消費者に届けてきた。格安のファッションや薄型テレビに慣れ親しんだ米国人は、間もなく値上げに悩まされるかもしれない。