JALとANAPhoto:PIXTA

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、コロナ禍によって大打撃を受けた業界・企業の業績の完全復活に対する期待が高まってきた。上場49社、15業界における月次の業績データをつぶさに見ると、企業の再起力において明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移を基に、「嵐」から「快晴」まで6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「【月次版】業界天気図」。今回は、2023年6月度の航空編だ。

JAL6600円キャンペーンの影響は?

 航空の主要2社が発表した2023年6月度の月次業績データは、以下の結果となった。

◯ANA国際線(ANAホールディングス〈HD〉)の旅客人数
 6月度:前年同月比214.8%(114.8%増)

◯ANA国内線(ANAHD)の旅客人数
 6月度:同137.8%(37.8%増)

◯JAL国際線(日本航空)の旅客人数
 6月度:同181.8%(81.8%増)

◯JAL国内線(日本航空)の旅客人数
 6月度:同142.3%(42.3%増)

 ANAもJALも前年実績を大幅に上回った。特に、国際線の増加が目立つ。5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、海外に行く人も増えた。また、外国人旅行者(インバウンド)の増加で全国の観光地が大賑わいであるといったニュースもよく見聞きするようになった。

 ただ、航空は新型コロナウイルス禍で大きな打撃を受けた業界の一つだ。コロナ禍で業績が大幅に悪化したので、そこからの反動増による「見せかけの好業績」の可能性もある。

 そこで、時系列で数字の推移を詳しく見ながら、コロナ前の水準と比較した「本当の回復度」を確認していこう。ANA国際線・国内線、JAL国際線・国内線のうち、コロナ前の水準まで回復している事業はあるだろうか? 当ててみてほしい。

 また、JALは4~6月、国内線の全路線を一律6600円(子どもは同4950円)にした破格のキャンペーンを行った。ウェブでのタイムセール開始直後、アクセスが集中したことからシステム障害が発生し、通常利用客まで巻き込んだトラブルとなった。

 一連のJALの対応が批判され、SNSを中心に“炎上”。これを受けてJALはキャンペーンを中止したが、体制を立て直して再開した。次ページで、本当の回復度とキャンペーンの関係性についても分析していこう。