「将来のお金が不安」「貯金や投資なんて余裕はない」「買い物を楽しめない」──​お金の悩みは尽きることがない。そんな中で「若い人ほど読んでほしい」「お金の知識を網羅的に学べる」と絶賛の声を集める本がある。『トゥー・ビー・リッチ 経済的な不安がなくなる賢いお金の増やし方』だ。誰でも今日からスタートできる「お金の増やし方」を提示し、世界で累計100万部突破した大ベストセラーだ。Amazon.comでは1万件以上の星5レビューが集まり、全米から世界中へと本書の実践者が増えている。本稿では本書から一部を特別に公開する。

投資で資産を増やしたいなら「今すぐやめるべき1つの行動」Photo: Adobe Stock

相場の先行きは専門家にも予測できない

 金融の専門家に勝つ方法について説明する前に、彼らが実際にやっていること、そして彼らのアドバイスがなぜ的外れなのかについて、少し詳しく見ていくことにする。

 最もわかりやすい金融の専門家と言えば、評論家とポートフォリオ・マネジャー(ミューチュアル・ファンドの資金運用を管理する)だ。

 彼らは相場の先行きを予測し、金利や原油価格、中国の蝶の羽ばたきが、いかに株式市場を動かすのかについて説明する。

 こうした彼らの予測を「市場の頃合いをはかる」と言う。

 ところが実際は、彼らは全く相場の先行きを予測できていない。

 相場がどれくらい上がるのか、どれくらい下がるのか、もしくは上がるのか下がるのかでさえも、見通すことができていないのだ。

 私はエネルギー業界や為替市場、グーグルの株価について、意見を求めるメールを毎日のように受け取る。

 誰にそんなことがわかるのだろうか?

 私にはわからない。とりわけ短期的な動きは全くお手上げだ。残念ながら、マーケットの動きを予測できる人などこの世にいない。

マーケットの毎日の些細な動きなんて知る必要はない

 それでもテレビのコメンテーターは毎日、その日の相場の動きを堂々と予測する。彼らは予測が正しかろうが、間違っていようが、全く責任を取るつもりはない。

 メディアは日々のマーケットの些細な動きを報じて利益を得ている。

 株式指数の数百ポイントの下落を受けて、専門家が暗い見通しを出すことがあれば、3日後には500ポイントの上昇を受けて、新聞の一面が希望一色に満ちていたりする。

 見ている分には面白いが、一歩後ろに下がって、自分自身に問いかけてみてほしい。

「ここから何かを学んでいるだろうか? 日々の相場の動きに困惑させられているだけなのでは?」。

 情報は多いほど良いわけではない。特に利用価値がなく、過ちにつながりやすい情報は有害ですらある。

 つまり、専門家の予測は全く無視してもかまわないということだ。彼らには将来、株式市場で何が起きるのか知る由もないのだ。

 少なくとも彼らの方が自分よりもマーケットについては詳しいと思うかもしれないが、彼らのトレーディングを見る限り、ファンド・マネジャーも金融業界の嘘の餌食になっている。

 彼らは頻繁に株式を売買し、最新の注目株を追いかけ、数多の一般投資家が気づいていない何かに自分は気づいていると勘違いしている。

 そして、顧客に対して法外な報酬を要求してくる。にもかかわらず、75パーセントの確率で相場に負けているのだ。

「でもラミット、僕のファンドは違うよ。過去2年間で80パーセントものリターンを叩き出しているんだ」

 とあなたは言うかもしれない。申し分のないリターンだ。ただ、数年間、相場をアウトパフォームしたからといって、次の年もアウトパフォームできるとは限らない。

 S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは2000~2016年までの調査を行い、ある年にベンチマークを上回ったファンド・マネジャーは、その翌年には同じようなリターンをあげられないことを明らかにした。

 同社のシニアアナリストであるライアン・ポイエーは「ある年に指数をアウトパフォームしたアクティブファンドのマネジャーが、その翌年に再び指数をアウトパフォームできる確率はコインで表(もしくは裏)が出る確率より低い」と語っている。

2008~2018年にかけて最も上昇した銘柄は?

 もし私が2008~2018年にかけて最も上昇した銘柄を当ててみてほしいと頼めば、グーグルを挙げる人は少なくないだろう。

 果たしてドミノピザを挙げる人が何人いるだろうか?

 2008年1月にグーグルに1000ドル投資していれば、10年後には3000ドルを少し上回っていた。10年で3倍というのは申し分のないリターンだ。

 ただ、もし同じ1000ドルをドミノピザに投資していれば、あなたの投資資金は約1万8000ドルまで増えていた。

 つまり、どのファンドやどの銘柄がマーケットをアウトパフォームするのかを長期間にわたって予測し続けることは不可能だということだ。できると言い張る人は、単なる嘘つきだ。

 専門家の予測は無視しよう。人生で一度きりの、まぐれの結果は無視しよう。

 ファンドの過去1~2年のパフォーマンスは無視しよう。

 ファンド・マネジャーも短期的には優れたパフォーマンスを叩き出すことがある。ただ長期的に見ると、相場に勝つことはほぼ不可能だ。

 経費はかかるし、正しい銘柄を当て続けることが確率的に難しくなるからだ。

 ファンドを評価する唯一の方法は、少なくとも10年以上の長期のトラックレコードを見ることだ。

(本原稿は、『トゥー・ビー・リッチ 経済的な不安がなくなる賢いお金の増やし方』からの抜粋です)

ラミット・セティ Ramit Sethi

ウェブサイト「I Will Teach You To Be Rich」を運営し、お金やビジネス、心理学について幅広い読者に向けて情報を発信している。これまでにThe New York Times、Fortune、The Wall Street Journalなど多くの経済メディアで取り上げられてきた。スタンフォード大学でテクノロジーと心理学を学び、現在は妻とニューヨークに住んでいる。Netflixでラミット・セティを特集した『ハウ・トゥー・ゲット・リッチ』が全世界に配信。