年収1位企業「M&Aキャピタルパートナーズ」が引き抜き行為巡り泥沼訴訟!GPS監視や賞与繰り延べで強まる社員の束縛Photo by Yasuo Katatae

上場企業の年収ランキングで2018年以降、連続1位にランクインしているM&A仲介大手、M&Aキャピタルパートナーズ(MACP、中村悟社長)で近年、社員への監視が強まっている。背景を探ると、日本M&Aセンター、ストライクに並ぶM&A仲介「御三家」の一角であるMACPの“弱点”が浮き彫りになってきた。(フリーライター 村上 力)

競合企業との相次ぐ訴訟で見えた
「M&A仲介御三家」の弱点とは?

「中村社長による束縛は厳しくなる一方で、社員をよほど信用していないんだなと思わざるを得ない」

 そう嘆くのは、M&Aキャピタルパートナーズ(MACP)の現役社員だ。MACPでは数年前から、社員の携帯電話にGPS追跡機能を付し、「MACPポリス」と呼ばれる位置情報監視の専門スタッフを置くなどして、社員の動向を監視していた。

 それに輪をかけて、今年6月からは社員に録音端末「AutoMemo」を携帯させ、顧客との商談を記録することがルール化されたという。AutoMemoは自動的に録音内容が社内に共有される。7月には、出張中の社員に対して、移動中などでない限り、朝8時にビデオ通話で始業のあいさつをすることも定められたという。位置情報だけでなく、社員の状況を抜かりなく把握したいという意図を感じる。

 また昨年には、賞与の支払時期が繰り延べられ、社員はMACPを退職しづらくなっている。MACPは昨年4月以降、半期ごとに支給されていた決算賞与のうち、半分は今まで通り支払うが、4分の1は翌年、残り4分の1は翌々年に支払うように賞与規定を改訂。これにより、個人のインセンティブを含めた全体の賞与のうち約3割が、常に翌年、翌々年に繰り延べられることとなったという。

 MACPの賞与規定は、「コンプライアンス違反、勤怠状況、退職の決定など、他の社員と比較し過去の業績または期待する将来の業績貢献に難があると認められる理由がある場合、分配額を減額または無支給とすることがある」という条項があり、退職した場合は、賞与が支払われない可能性がある。

 MACPは平均年収が2000万~3000万円の高収入企業として知られるが、その内訳は、基本給が400万円程度で、年収として語られている大半は個人の営業成績や業績に連動した賞与が占めている。賞与の一部とはいえ、繰り延べられる金額は数百万円に及ぶ。

 社員の締め付けが強化された理由は、近年、MACPで起きている社員の相次ぐ退職の影響だろう。関係者への取材を進めると、社員への監視強化や評価基準など、一般企業からすれば異様ともいえる職場環境が分かった。次ページでそれを明らかにする。