中小企業同士のM&Aでトラブルが頻発していることを受けて、会社を売りたいオーナー経営者と買い手企業の間に立ってM&Aの成立を支援する、M&A仲介会社の存在に注目が集まっています。そこで、業界の内情に迫った特集『沸騰!M&A仲介 カネと罠』を再配信します。(記事初出時:2022年2月9日 ※記事内容は初出時のまま)
稼げる業界の代名詞として定着しつつあるM&A仲介業界。30歳前後で年収2000万円超も狙えるものの、半面、昼夜を問わず働くのは当たり前の激務を乗り越えなければならないというのは本当か。特集『沸騰!M&A仲介 カネと罠』(全15回)の#5では、M&A仲介業界に身を置く4人の現役社員を直撃。働き方、給与、「デキる」人の条件など、M&A仲介の実態を余すことなくお届けする。(ダイヤモンド編集部 片田江康男、新井美江子)
花形部署の出身者はかえって使えない!?
M&A仲介の「適任者」の資質とは
――M&A仲介業界は高年収を稼げる半面、どぶ板営業が求められるイメージです。実際のところどうですか。やはり、ひたすら電話営業をしたりするのでしょうか。
間宮(仮名) 電話営業を外注するM&A仲介会社もありますが、大きい案件を取るには、社長の心をがっちりつかむために自分で電話をしたりダイレクトメールを送ったり、場合によっては飛び込み訪問をしたりしないと駄目ですね。
伊藤(仮名) 狙っている会社や業界は、みんな狙っていますからね。例えばIT企業やヘルスケア企業は今、M&Aがものすごく活況なんですよ。
――だからこそ、ライバルに打ち勝つためには骨を折って営業しないと案件が取れないというわけですか。
間宮 M&Aキャピタルパートナーズは、中村(悟)社長が自ら先導して週に1回、社員みんなで電話営業を2~3時間行っていると聞きますよ。
伊藤 中村社長が電話していたら、社員はみんなやるしかないですよね。もっとも、社長ですらつらい営業を厭わないなんて、なんてフェアな会社なんだ!って感動してやる気を出せる人しか残れないんですけど(笑)。
佐伯(仮名) 電話営業は心が折れますからね。
伊藤 朝から晩まで1日で100件、200件電話しますもんね。
間宮 まともな話に発展するのは、1000件電話しても3件ぐらいですし。「会社を売りませんかなんて、そんな電話二度とかけてくるな!」って怒られることがほとんど。
佐伯 怒られるならまだマシ。社長につないでもらえず、受付段階で蹴られることも多い。
伊藤 だから意外とM&A仲介業務っていうのは、銀行出身者なら経営企画部とかの花形部署の出身じゃなく、中堅・中小企業の融資担当に回されているような亜流部署出身の劣等感を持ったやつの方ががんばれる。
秋田(仮名) それはある。王道を歩んできた人はプライドがあるし、邪険にされながら電話し続けるなんてできないんですよ。どこかで負けを経験したけど、一発逆転したいんだ!という人は、しんどくても心がポキっといかない。甲子園に出られなかった分、“人生の甲子園”には出てやろう、みたいな。実際に僕はそんな感じ。
――なるほど。ちなみに、M&A仲介業界で活躍している人に備わる「最低限の資質」を挙げるとしたら何でしょうか?