IDにスマホ番号と銀行口座が紐づいている

 さまざまなサービスで利用できるシンガポールの国民IDだが、その価値を圧倒的に高めているのは、国民IDにスマホ番号と銀行口座番号が紐づいている点といえる。

 たとえば、政府からの納税関連の通知は、すべてSMSでスマホに届く。紙の通知を待つ必要はなく、プッシュ通知により見逃す心配がないので、私はとても便利だと感じている。

 また、国民IDが銀行口座番号と紐づいているため、銀行引き落としの設定をしておけば、毎月自動的に納税することもできる。所得控除を受けることができる寄付金なども、寄付をする際に国民IDを記載しておけば、特別に申告をしなくても自動的に控除される。さらに、シングパスは企業IDとも紐づけることができる。シングパスを持っている個人は、企業IDとしてのコープパス(Corppass)に登録することができる。コープパスとは、企業が政府機関との取引を行うためのオンラインサービスである。企業はコープパスを使用して、税務申告、ビジネス許可申請、社会保険の登録など、さまざまな政府機関との取引を行うことができる。

 つまり、企業トップや管理部門の担当者が国民IDとそれに紐づくオンライン認証サービスのシングパスに登録していれば、一つのIDで個人のみならず、企業にとって必要なさまざまなサービスを受けることができるのである。

 たとえば、就労ビザの申請をするためにMOM(Ministry of Manpower:労働省)のウェブサイトにログインするときと、最新の規制動向を確認するためにMAS(Monetary Authority of Singapore:シンガポール金融管理局)のウェブサイトにログインするときに同じIDを使用することができる。スマホアプリと連動したセキュリティも用意されているため、多数のパスワードを管理するわずらわしさもない。